image

暗く先の見えないトンネルのような
イスラエルとパレスチナの関係を描いた
イスラエル発のグラフィックノベル『トンネル』を翻訳出版したい!

京都精華大学国際マンガ研究センターのイトウユウ先生から応援メッセージを頂きました!


京都国際マンガミュージアムの翻訳海外マンガを紹介するコーナーをバックに、アングレームのバンド・デシネのフェスTシャツで、ルトゥの『プロパティ』(フランス語版)を持つイトウ先生
 

276ページを一気に読んだ。
なぜか。まずもって、極上の考古学ミステリーエンタメ作品として面白いからである!
考古学ミステリーは、マンガに限らず、映画や小説といったポピュラーエンタテインメントの世界で長年にわたって、磨かれてきたジャンル。
日本のマンガのことを考えるだけでも、諸星大二郎や星野之宣の諸作品や手塚治虫「三つ目がとおる」といったオカルトロマン、アラブ人の王子と出会うために(?)女性考古学者がやたら登場するハーレークインコミックスなど、考古学をテーマにしたマンガは、実は絶え間なく生み出されてきた。

しかしながら、宗教的な「秘宝」をめぐる三つ巴、四つ巴の争奪戦という物語も、その舞台がイスラエル・パレスチナで、登場人物が、ユダヤ人の女性考古学者だったり、その幼馴染のパレスチナ人密輸業者だったりすることがはっきりすると、古代への壮大なロマンを楽しむ娯楽という側面以上に、地政をめぐるきわめて現代的で政治的な対立問題こそをテーマにしている、ということに、読者もすぐに気が付くだろう。
考えてみれば、多くの考古学ロマンは、「インディ・ジョーンズ」シリーズも「ロバート・ラングドン」シリーズもそうであるように、白人男性を主人公とする、キリスト教(とその「異端」派)をめぐる冒険譚だった。
ポリティカルな批評性を多分に持っているこの作品は、ひるがえって、考古学エンタメ、ひいては「考古学」という営み自体の政治性についても考えさせる、きわめて知的な挑発に満ちた作品である。

もっとも、作者のグラフフィックは、キャラクター造形を見ても、コマ割り等のマンガ表現を見ても、いわゆる劇画的でドラマティックな作風ではない。上品なカラーリングを含め、エルジェの「タンタン」シリーズを思い出させる、むしろ古風で静的なたたずまいさえある。
複雑で感情的になる可能性さえあるテーマを、誰も拒否しないフラットな絵柄で表現する、というのは、Rutu Modanという作家の特徴のひとつだが、それは、表現者としてのひとつの誠意なのかもしれない。

中東問題を遠くの出来事と思い込んでいる日本でこそ、翻訳出版され、多くの人に読んでもらいたい作品である。
そして、願わくは、つづけて、同じ作者による「Exit Wounds」や「La propriété」といった作品が日本語訳されますように!
 


ルトゥの作品たちと撮影するイトウ先生

イトウユウ(伊藤遊)先生は、国際マンガ研究センターで、国内外のマンガ関連文化施設やマンガ展の調査や、日本で独自の発展を遂げている「学習マンガ」の研究も進めている研究者です。また京都精華大学で特任准教授として教鞭も取っていらっしゃいます。
 

残り期間が1ヶ月ほどに迫ってきました。
どうか成立までSNS情報拡散にお力添えください!

2023/05/23 11:21