バヴアの活動を支援してくれている嶋田拓郎氏
日本において「遠い国の話」とされがちイスラエル・パレスチナ問題。
特にイスラエル社会が抱える人種、民族的な問題はほとんど知られていません。
そのイスラエル社会に横たわる多様な現実を「マンガ」という視点で、日本社会に住む私たちに紹介してくれているのが、彼ら/彼女ら「バヴア」です。
私は、「バヴア」が制作/紹介する作品が提示する物の見方を信頼しています。
それは、井川アティアス翔さんと戸澤典子さんが、イスラエル社会で困難を抱えながらも暮らす人たちにインタビューをして、当事者の持つ「白黒はっきりできない揺らぐ感情」を、私たち日本に住む者に伝えようと努力しているから。
その姿を私は知っているから。
あまりにも複雑なイスラエル社会の現実を、どのような視点で切り取り、日本社会に紹介できるのかー。
文章だけでは読み取れない「暮らしの空気」までをも伝えようと考えたとき、「バヴア」の2人は「マンガ」というメディアを、意図を持って選択したのだと思います。
このように、イスラエルの多様な現実を多様なまま見せようとする2人が今回翻訳出版を目指しているルトゥ・モダンも、イスラエル社会の多様性に着目しているアーティストです。
ルトゥと同様の視点を持つ彼らが、作品「トンネル」を通して、複雑なイスラエル社会の現実を日本の読者にぜひ触れて欲しいと感じたのではないかと思います。
そもそも、イスラエル・パレスチナ問題をニュースで観るだけでは、私たち日本人は、イスラエル・パレスチナに住む人々のことを「自分たちとは関係のない遠い存在」としか見ることができないのかもしれません。
それは私が日々仕事で接する日本で暮らす重度障害者の方達の状況も一緒です。日常的に接し対話する機会がなければ、どんなに近くに暮らしていても「自分たちとは関係のない遠い存在」となってしまうことを、私は日々実感しています。
だからこそ、「自分たちとは関係のない遠い存在」の暮らしの、「多様な現実を多様なまま見せようとする」取組みは重要なのだと思っています。
そうして初めて、なかなか繋がらない人々が時に繋がることもあるからです。
それを私は「連帯」であると思っています。
今後、「バヴア」は、イスラエル社会の多様な価値観や文化を日本に紹介する重要な存在になっていくに違いありません。
この「多様な現実を多様なまま見せようとする」2人の挑戦を、私は尊敬し、微力ながら応援しています。
嶋田拓郎
一般社団法人わをん理事・事務局長/介助者