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暗く先の見えないトンネルのような
イスラエルとパレスチナの関係を描いた
イスラエル発のグラフィックノベル『トンネル』を翻訳出版したい!

わたしたちバヴアの願い


バヴアのメンバーの井川と戸澤


 前回の発起人のご挨拶では、バヴアのメンバーについてあまりお話しすることができなかったので、2回目となる今回の活動報告では、「バヴアって何者?」に始まり、「わたしたちバヴアの願い」について書きたいと思います。(お天気が良いので、この文章はバヴアの事務所前の公園で書いています。)

 まず、私たちのユニットの名前である「バヴア」という言葉が耳慣れないですよね。
「バヴア」はイスラエルの公用語であるヘブライ語でリフレクション、つまり何かを映し出すものという意味です。例えば、雨上がりの水溜まりに映る景色や、湖の湖面に映る周りの山々の景色のようなイメージです。では、なぜそんな名前をつけたのか?
この命名には、バヴアの二人、井川と戸澤のそれぞれの人生から発せられた物語作りへの想いが込められています。ここからは、井川と戸澤がそれぞれに語ります。


バヴアのメンバーの一人 井川アティアス翔
     

 はじめまして。バヴアの井川アティアス翔です。イスラエルで英語の教師を始めて、4年目を迎えました。子供時代はアメリカで過ごしましたが、日本にもよく行っていたので、自分が大人になって、母親の母国であるイスラエルに永住することになるとは想像もしていませんでした。2014年のイスラエル訪問では、初めてガザ戦争を現地で体験し、この経験からパレスチナ問題について学び始めました。一時期はアメリカ人や日本人とともにパレスチナ支援に関わっていましたが、イスラエル人としてより平和な未来への小さな一助になれないかと考えた時に、「教育」も重要だと考えるようになりました。 

 今は、社会的・経済的に恵まれていない人々が暮らす地区の高校で英語を教えています。この地区の子どもたちは、質の高い英語教育や海外留学の機会に恵まれてはいません。だからこそ、子供たちが少しでも英語や「海外のこと」に触れられるような授業を心がけています。「海外のこと」に触れることで、子どもたちが様々な人々に対して寛容な考え方を持つきっかけになってくれればと願っています。そして、もちろん生徒たちから学ぶことも沢山あります。もっともっと生徒たちから信頼されて、指導力のある教師になれるよう頑張っていきたいと思います。 
 日々の授業を通して、日本人にも馴染みのある「漫画」を教育ツールとしても使えると確信しています。例えば、イスラエルやパレスチナについて、漫画を通して日本の人びとに知ってもらえたり、イスラエルの子どもたちに自分とは違う他者について知ってもらうこともできます。ぜひ、誰もが触れやすい漫画という媒体を教育に活かしていきたいです!教育の場で、漫画の活用を目指すバヴアの活動を応援してもらえると嬉しいです!

                                                          



バヴアのメンバーの一人、戸澤典子


 はじめまして。バヴアの戸澤典子です。私はこの2月に還暦を迎えた社会人の博士課程学生です。還暦で博士課程の学生?そうなんです。私自身は望んではいなかったものの、私の人生は日本の一般的なライフコースからかなり外れてしまっているかもしれません。
 20代半ばで結婚し、パートナーの転勤で青森県の弘前市に移り、二人の娘たちと共に7年間暮らしました。帰京後、仕事を始めたものの、家庭と仕事の両立は大変でした。頻繁な転勤と、数字に追われる状況に身体も心も疲れ果て、自分のキャリアを変えたいと思い、40代半ばで初めて大学の門を叩きました。これが私の人生の転機となりました。大学での学びは刺激的でした。なぜなら、今まで自分が見てきた社会が違って見えたからです。

 縁があり、大学3年生の時に、イスラエル・パレスチナの地に行くことになりました。イスラエル・パレスチナと聞くと、それだけで「難しそう」というイメージがありました。そして、やはり実際に行ってみて、イスラエル・パレスチナ問題の歴史的な経過、占領という現実など、想像通り難しかったのです。そして旅の途中、2つのことが頭から離れませんでした。一つは、被占領地であるというパレスチナの圧倒的な現実と分離壁を隔て併存するイスラエル社会とを説明する言葉が自分に見つからなかったこと、二つ目はアラブ諸国出身のユダヤ人の存在でした。アラビア語を話し、アラブの文化を知るユダヤ人の存在は、ユダヤとアラブの対立を前提にしていた私にとって目から鱗でした。一体、アラブ系ユダヤ人とはどういう人たちなのか。どういう人生を辿ったのか。私のイスラエルに対する理解は、モロッコから移住したアラブ系ユダヤ人を起点とするまなざしとなっていったのです。彼らが移住直後から受けてきたヨーロッパ系ユダヤ人による社会的・経済的な差別や、1970年代に起こった「オリエンタル・リバイバル」によるアラブ諸国出身のユダヤ人の文化的復興など、今ではイスラエル人口の4割を占める人たちですが、彼らの移住の歴史は日本の教科書には書かれていない一つのイスラエルの顔のように思います。そしてこの「モロッコ系ユダヤ人」が、プロジェクトパートナーである井川と私を、イスラエルから遠いこの東京で繋げてくれたのも、何かの縁としか言いようがないと感じています。


<わたしたちバヴアの願い> 

 こんな井川と戸澤が結成したバヴア。日本人とイスラエル人のハーフの井川も、社会人で大学に入った戸澤も、日本社会から見ると少し外れた二人かもしれません。だからこそ、社会の多様性や、「他者」であると感じている、もしくは「他者」として扱われている人たちに関心があります。「他者」であったとしても、人間としての普遍的な思いは同じです。例えば、家族への想いや、恋人と過ごす時間への愛おしさ、自分が成し遂げたい夢など、その人の人生にとってかけがえのないものは、「他者」であるかどうかの点で変わることはありません。
 そしてこのような普遍的なものや社会の多様性が見えるのが、私たちの日常ではないでしょうか。日常は、あまりに普通すぎて何の変哲もないものと映る一方、社会にはびこる偏見や差別なども同時に見え隠れする場です。バヴアはインタビューを通して物語を制作しているのですが、インタビューの何気ない一言にその人が置かれている社会的・経済的環境が現れることも少なくありません。そんな思いを形にしたのが、『だれも知らないイスラエル「究極の移民国家」を生きる』(2021年、花伝社)になります。この本では、移民国家イスラエルに暮らす人々の日常を日本の読者に紹介したいと出版しました。バヴアが制作した4つのマンガ作品とエッセイ、イスラエル人アーティストのインタビューを盛り込みました。

 


『だれも知らないイスラエル「究極の移民国家」を生きる』
(花伝社、2021年)

          

 ではなぜ、バヴアはマンガで物語を制作しているのでしょうか。
私たちはイラストと言葉の2つの表現方法を同時に持つマンガのコミュニケーションの力を信じています。映画に比べ、マンガは読者に想像をする時間を与えてくれます。また小説本に比べ、イラストがあるので読みやすく、幅広い層が読むことができます。これらのマンガの強みが生かされるのが、イスラエル・パレスチナのような複雑な問題を抱える社会に生きる人々を描くときだと思います。

 今回、バヴアがクラウドファンディングで翻訳出版を目指すルトゥ・モダンは、バヴアのこのような想いと重なるものを持ったアーティストです。彼女の『トンネル』は、イスラエルが占領する被占領地を背景に、多様な人々のつながりを見せています。例えば、現実の世界ではなかなか繋がることが難しいイスラエル人とパレスチナ人、父親との関係に確執を持った姉弟、世俗の考古学者と信仰を持つ入植者(被占領地に住むイスラエル人)、考古学者と骨董品収集家、骨董収集家とISIS(イスラーム国)、現場を偏重する考古学者と学問を偏重する考古学者などが、時に騙し合い、時に協力関係になる。ありうるかもしれないであろう多様な人間関係を、日常と非日常が非常に接近している占領地を背景に描いているのです。

       
          
『トンネル』英語版表紙                


作者 ルトゥ・モダン(Rutu, Modan, Drawn and Quarterly, 2021)


 私たちバヴアは、ぜひ日本の方々にルトゥ・モダンの豊かな物語に触れていただきたいと切に願っています。現在、クラファンの状況はなかなか厳しいですが、これまでご支援くださった皆様の応援を糧に、ぜひ『トンネル』を出版できるよう頑張っていきます。
今後ともご声援、ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。


最後に、井川と戸澤から目標金額の10%達成!御礼のビデオメッセージです!
もしよかったら、ご覧になってみてください。
 

 

 


グラフィックノベル制作ユニット バヴア
井川アティアス翔
戸澤 典子

2023/04/13 13:30