2023年の3月を迎え、今年2回目の活動報告になります。発起人の三宅雅之です。
「ペタンクの歴史」は翻訳作業を終え、編集作業に入っています。
ペタンク競技の歴史をくわしく描いた本はフランス本国でも余り見かけません。ですから、この本が日本で翻訳出版されると、日本で初めてペタンクの歴史が紹介されることになろうかと思います。
そしてもう一つ、この本が日本に初めて紹介するのは、プロヴァンサル競技の歴史です。
ご存知のように、ペタンクはプロヴァンサルという競技を母体として生まれました。
年老いて足が不自由になったプロヴァンサルのプレイヤーが、助走をせず、立ち止まったままブールを投げたのがペタンクの始まりだったのです。
この逸話は有名ですが、ではそのプロヴァンサルとはどんな競技であったのか、知る人は余り居ないのではないでしょうか。
ペタンクの母体となったプロヴァンサルは、日本でプレーされることもなく、それを解説する書籍等も殆どありません。
実のところ、私自身もプロヴァンサルを見たこともプレーしたこともないのです。
しかし、フランスでは多くの人がプロヴァンサル競技を行い、大きな大会も開催されています。
「ペタンクの歴史」の原題は”PASSION PETANQUE”ですが、その副題は”Histoire de la Pétanque et du Jeu Provençal(ペタンクとプロヴァンサルの歴史)”です。
本書はペタンクの歴史と同時に、その母体となったプロヴァンサルの歴史やプレイヤー達の活躍も描いています。
19世紀に南仏のプロヴァンス地方で生まれたプロヴァンサルは、ペタンクと同じブールを投げる競技ですが、競技するコートの長さが24mと長く、投球サークルから一歩踏み出してブールを投げます。また、ティールと呼ばれる相手のブールを打ち出すための投球の時は、3歩の助走を行います。
そして極めつけは、手前からブールを転がすティールが禁じられていることです。
ティールは目標の1メートル以内までブールを投球しないといけないのです。
なぜそうしたルールが設けられたかを推測すると、おそらく手前から転がして目標に当てるティールは、ゲームの面白みを損なうと考えられたからだと思われます。
やはり、ティールはゲームの見せ場であり、投げたブールが高い弧を描いてダイナミックに相手ブール近くまで飛び、打ち出すことが理想とされたのでしょう。
今日、ペタンクをプレーしていても、ティールしようと投げたブールが目標のかなり手前に落ちて、そのまま転がって目標に当たると、(ルール上は問題ないのですが)恥ずかしげに苦笑いするような選手が見られます。これはプロヴァンサルのルールと理想が影響しているようです。
確かに、プロヴァンサルのダイナミックなプレーを期待する人達には、ペタンクはすこし大人しすぎるかもしれません。
でも本書でペタンクが生まれた経緯を読んでいただければ、それが足が不自由な人でもプレーできる競技として始まった事がわかります。
プロヴァンサルのルールを下敷きにして、距離を短くし、助走を無くし、ティールも易しくし、より親しみやすく創られたのがペタンクだったのです。
そのため、ペタンクは多くの人に愛され、瞬く間にプロヴァンサルを上回る人気スポーツになり、全世界に広がりました。
ペタンクの歴史を学ぶことで、ペタンクのあるべき姿についてより深い理解と考察をしていただければ、本書を出版する人間として本望です。
三宅雅之