ペピーク・ストジェハは、冒険小説を読んでは空想の世界に遊ぶ内気な男の子で、もちろん学校でも人気者からは程遠い存在です。
面白いことに、このチェフの本、日本の国民的マンガ、ドラえもんにキャラクター設定が似ているようにも感じます。いつもペピークに威張って暴力的なクラスの男子は、体系もずんぐり型で、まさしくジャイアン。この本では女の子ですが、ちょっと嫌味な意地悪っ子、スネ夫らしき子どももちゃんといます。そして、意外と芯が強い美少女エルゼヴィーラに、頼りない主人公。エルゼヴィーラはドラえもんとしずかちゃんの二役的存在と、言えるかもしれません。
チェフは知る由もない日本のマンガですが、やはり、どこの国でも、子どもたちは似ているのでしょうね。そんな彼らの日常風景を知ることができるのもマンガの面白さです。
そんな学校の子どもたちの様子はYoutubeで紹介させていただきました。日本語訳字幕が入ったチェコ語での朗読です。チェコ語の雰囲気を味わいたい方は、ぜひ、そちらもご覧ください。伴奏音楽は、ピアニストがチェコ音楽を即興でアレンジしてくれました。
『ペピーク・ストジェハの大冒険』をチェコ語で朗読 1 - YouTube
学校では人気者とは程遠いペピークですが、次第に本の世界だけでなく、自分たちが住んでいる街の不思議に夢中になります。いわくつきの場所と謎を求めて、エルゼヴィーラと探検するペピーク。曲がりくねった石畳の小路を抜け、中世の階段を上り、古い邸宅の外壁に閉じ込められた庭々を隙間から覗きます。
中でも興味がそそられるのは、街を流れる大きな河畔に佇む水車小屋です。もう、誰にも使われていないこの水車小屋では、悪魔と契約を交わした男性が時を遡る研究をしていたという逸話があります。しかも、大ナマズが住みついていて、近付くものを水の中に引きずり込むらしいのです。
冬のある日、凍った河でスケートを楽しんでいたペピークとエルゼヴィーラですが、ペピークは氷の穴に落ちてしまいます。間一髪、エルゼヴィーラに助けられたペピークは、寒さに凍えながら暖を求めてあの水車小屋に入り込みます。
どうやって入ったのだろう
気が付いたら僕たちは古い空き家の中で手をつないでいた
寒くて震えて 上手く話せない
エルゼヴィーラが小さな箱をポケットから取り出した。
(エルゼヴィーラ)
火をおこすから 服は全部脱いでね
やった! 点いたからすぐに暖かくなるわ
やっと震えが止まった
心地よい暖かさが暖炉から上がり 氷で切った手の傷の血も止まった
(ペピーク)
もう だ だいぶ だ 誰も住んでないみたいだね
運がいいよ……けど どうしてこの家の戸があ 開いているって知ってたの
(エルゼヴィーラ)
そう願ったの
(ペピーク)
か 乾いたかな パンツ……
あとちょっとか
(エルゼヴィーラ)
あのね ペピーク
ちょっと待ってて
乾くの待ってる間 私 靴を探してくる
(ペピーク)
気をつけて
もうく 暗い か から
(エルゼヴィーラ)
怖いんでしょ
すぐに戻ってくるって
と言うことで僕は一人残った
一人
空き家の中は
怖ろしいほど静かで
ときどき暖炉の薪が弾けた
暗い隅を見ないようにしながらバケツを火に近づける
(ペピーク)
今 何時だろう
(ペピーク)
なんで戻ってこないんだろう
蝋燭だ
絵と古い写真が壁に掛かっていた。
(エルゼヴィーラ)
私よ
雪が降り始めたわ
ペピーク 凄い熱
家まで送るから
それから どうやって家に帰ったのか思い出せない
熱で震えが止まらなくて 両親がベットに運んでくれると 僕は眠ってしまった
夢の中で また 僕は 黒い水に落ちた
氷の穴は見つけられなかった
次の日 医者が来て 薬を貰った
いつも寝ていた
1ヶ月もの間 ずっと 家にいたんだ
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ノスタルジックな中にも温もりとボヘミアングラスの透明感を持ったイラストで描かれる中世の街並みの中、物語は近代、現代、そして時間と切り離された精神世界へと、想いもかけない展開を見せます。
『ペピーク・ストジェハの大冒険』の日本語バージョン、数ページではありましたが雰囲気を楽しんでいただけましたか。日本語訳は編集の段階で変わることもありますので、ご了承ください。
翻訳部分とは少しずれますが、ペピークが凍った河に落ちるシーンのピアノ伴奏付きチェコ語朗読はこちら。日本語字幕付きです。
『ペピーク・ストジェハの大冒険』をチェコ語で朗読 2 - YouTube
消えてしまったエルゼヴィーラ。ペピークはエルゼヴィーラを見付けることができるのでしょうか。エルゼヴィーラは何者なのか。そして時を遡る研究とは。
『ペピーク・ストジェハの大冒険』をチェコ語で朗読 3 - YouTube