image

吃音で悩む少年の大冒険を描いた
美しい色彩の幻想的なチェコ・コミック
『ペピーク・ストジェハの大冒険』を翻訳出版したい!

7/14開催『ペピーク・ストジェハの大冒険』原書を囲む会 イベントレポート

こんにちは。発起人のパーレニーチェクと髙松です。

日本の多くの方に読んでいただきたい『ペピーク・ストジェハの大冒険』ですが、ストーリーはもちろんのこと、観たものの心を一気に物語に引き込むチェフの絵は、多くのマンガ・海外コミックスの中でも独特な存在感を放っています。そんなチェフの作品は日本では出版されていないので、その絵を画像でしか紹介できないことをもどかしく思っていました。本として出版された時点で原画の風合いが多少は薄れてしまうのは世の常ですが、私たちアマチュアが撮った画像では魅力が半減どころではありません。そこで、急遽7/14に、ペピーク・ストジェハの大冒険』原書を囲む会をチェコセンター東京で開催しました。

あいにくの雨でしたが何人もの方が会場に足を運んでくれました。中には広島在住の方も!2017年、2018年の『チェコ・コミックの100年」展で展示されたチェフを覚えていてくださった方、そして発起人の一人、パーレニーチェクが原作・アドバイザーを担当した『Iogi 井荻』展~チェコの若手マンガ家が描いた日本の日常~を観てくださっていた方もいらっしゃいました。本当にどうもありがとうございました。

雨にも負けずに来てくださって感謝です!

 

会の初めに、まず、サウザンコミックス編集主幹の原正人さんがサウザンコミックスを紹介。今まで想像もしなかったような事件が国内外と起きている、こんなご時世だからこそ世界の本・コミックを読む、世界を知る、想像の幅を広げる重要性を共有しました。

 

次に歴史的背景を交えながら、知られざるチェフの魅力をパーレニーチェクが解説。挿絵画家としてだけでなく、作家、そしてアーティストとして子どもとのワークショップから街の文化構想協力までと、幅広く活躍するチェフを画像で紹介しました。チェフを理解するためには、作品を観るだけでは分からない、チェコスロバキア共産党一党独裁時代に表現の自由を奪われた文化人とアーティストの特殊なアンダーグラウンド コミュニティー、パラレルソサイティーを知る必要があります。当時、政府の言う通りに動かないからなどの理由から発表の場を失われ、職場や学校を強制的に追い出される文人や芸術家が大勢いました。鉄のカーテンの向こう側の退廃的文化を象徴するものの一つ、コミック作家もその例外ではありません。彼らは作品を公に発表することを禁じられ、常に監視されていました。

その一方で、パラレルソサイティー内には、強い結束と知的な刺激に富んだ分野を超えた文人・芸術家同士の交流がありました。錠前師、工員、消防士と、マンガや美術とは何の関係もない職業を転々としたチェフが、『ペピーク・ストジェハの大冒険』だけでなく、独裁政権を批判するコミック『A』や心理学者ユングから影響を受けて描いた『Vlak』など、大人にもとっても読み応えのある作品を作り続けるのには、こうした社会的、歴史的背景があります。

日本で未出版のチェフ作品

 

多くの西欧諸国と日本では、独裁政権国家での生活を経験した方は多くないでしょう。戦時下とも違い、政府にとって戦う相手が外にいる緊張状態とも違う厳しい状況でした。このような時代を生きながら、自らを見失うことなく、自分の心に忠実で自由であれと文化活動を続けた文化人や芸術家たち。旧共産圏で表現の自由と民主主義を守ろうとする、現在にも通じる強い想いを感じていただけたのではないでしょうか。

 

もう一つ、特筆すべきことは吃音症です。『ペピーク・ストジェハの大冒険』主人公ペピークの吃音症はストーリーのテーマではないものの、大切な構成要素の一つです。チェコ・アニメの巨匠イジー・トルンカの『庭』にも吃音症を持った少年が出てきますが、吃音症児自体は眼鏡や髪の色と言った特徴程の位置付けです。だからと言って欧米で吃音症への偏見がない訳ではないのですが、芸術分野においては随分と違います。世界中、どの国においても1%ほどの割合で現れる吃音は、排除されることなく芸術作品に登場します。

そこで、吃音とはどんなものかきちんと知ろうと、日本吃音協会の大矢様からお話しを伺いました。吃音症には大きく3種類の言語症状があること、社会の目だけではなく心配されることで生まれてしまう心の葛藤と不安について説明していただき、さらに皆でできるコミュニケーション改善への具体例をレクチャーしていただきました。

日本吃音協会の大矢様に吃音について伺いました

 

人はそれぞれ違う悩みを抱えて生きています。その違いを突き合っても悲しみや憎しみしか出てきません。違い自体は苦しみでも喜びでもなく、そのものでしかありません。皆でちょっとしたアイデアを出して共有することで、環境改善への大きな歯車を動かしていけることが分かりました。音楽や絵画、文学、そして『ペピーク・ストジェハの大冒険』のようなコミックが心と心を繋ぐお手伝いを、微力ながらも頑張っていきたいと思いました。どうぞよろしくお願いいたします。

原書を囲んで

 

そして、そして、会の当日には支援金額33%を達成!皆さまの力を感じました!心から感謝しています。
プロジェクトへのご参加、応援、情報拡散協力を、どうぞ宜しくお願い申し上げます!

 

 

2022/07/20 14:11