プライド叢書の第1弾として『ぼくを燃やす炎』のクラウドファンディングを実施してから5年が経ちました。PRIDE叢書はおかげさまで軌道に乗り、すでに10冊が刊行されています。
世界ではセクシュアルマイノリティをテーマとした良書が多数、出版されているのに、さまざまな事情からなかなか翻訳されることがない。ならばクラウドファンディングで翻訳出版するシリーズを作ろう。そうして起ち上がったのがPRIDE叢書でした。
初めからシリーズ化が企画されていたものの、まず1冊目が出ないと叢書も何もあったもんじゃない、というわけで、何としても『ぼくを燃やす炎』を出さねばと眦を決してクラファンを始めました。
私自身としても初めてのクラファン挑戦で、右も左も分からないまま、多くの人に相談させていただき、協力していただきました。途中まで伸び悩んだ支援者数ですが、終盤に差し掛かると伸び始めます。それは、SNSでの情報拡散など、自主的に協力してくれる応援団が登場してくれたおかげです。
中でもパワフルだったのは有限会社イスパニカ代表で、スペイン語圏の情報を日本に紹介している本橋祈さんでした。本橋さんは毎日、短い応援動画をアップしてくれて、それは伸び悩んでいたときに心折れそうだった私を奮い立たせてくれました。本橋さんの明るいキャラクターのおかげで、クラファンはまるでお祭りのように盛り上がっていき、「ボクモヤ」というちょっとおかしみのある略称も出てきました。
大勢の人たちのおかげで『ぼくを燃やす炎』を世に出すことが出来てから、早くも5年。
この間、LGBTQ+をめぐる状況はどう変わってきたでしょう。全国にパートナーシップ条例が広がり、札幌地裁が同性婚を認めないのは違憲とする判決を出すなど、良いニュースがありました。一方で、トランス女性に対する差別が激しさを増すという、状況の悪化もあります。
いっきに状況が改善したわけではないが、少しずつだけど人々の意識は変わっていっている。個人的にはそんな印象を持っています。まだまだPRIDE叢書として、LGBTQ+が生きてゆく力となるような書籍を刊行していかなければ。
そんな決意を込めて、5年の節目に、ボクモヤの姉妹作である「ボクナガ」のクラウドファンディングを始めました。ボクモヤを応援してくれた人も、まだ読んでいない人も、どうかよろしくお願いいたします。
また、ボクナガの5年後に振り返って、社会が良くなったと言えるといいなと思っています。
宇田川しい(うだがわ・しい)
ライター、編集者。ゲイ・アクティビスト。90年代のゲイブーム時代からゲイであることをカミングアウトしライターとして主にストレート向けのメディアで活動。近年ではハフポストジャパンなどでセクシュアル・マイノリティのリアルな姿や、社会における問題を伝える記事を執筆している。