ジミープロジェクト通信(その2)
プロジェクトチームの田原です。
「表現したい人が作家として表現し、その表現を受け取って出版したいと思った人が編集者として出版する」のが、出版の原理だと橘川さんが言う。
1980年代は、新人を発掘して、著者と一緒に考えて、出版社の仕組みを利用して本を出していくという編集者がいっぱいいたのだそうだ。
1990年頃から、出版社が市場調査で「売れそうな本」のテーマを探し出し、それを書くことができる著者に依頼して本を出版するという本末転倒が起こったのだという。
実際、僕も、そのような形で執筆依頼をされて書いた本が4冊ある。企画として持ち込んだ本も、出版社の「売れる公式」に当てはまるように、かなり修正して出版することになった。
それに対して、『出現する参加型社会』は、本当に書きたいことを書きたいように書いた。そして、初刷りの印刷代をクラウドファンディングで集めてメタブレーンから出版した。メタブレーンという出版社は、自分たちで本を出版できるようにと、橘川さんが作り、太田さんが経営している出版社だ。依頼されているのではなく、自分で表現したいものを作っているという意識で書いた本を、読みたいと思った人が応援してくれるというところに、本来の出版の姿があるのだと実感した経験だった。
小説「ジミー」は、青海エイミーの表現欲求によって書かれた本だ。それを読んで「この本を出版したい」という意志を示す人ができてきて、機運が盛り上がったら出版していこうということになった。
1980年代にいたような編集者の機能をソーシャル化した「ソーシャル編集者」というコンセプトが生まれた。
しかし、ここで、大きな壁にぶつかった。
小説「ジミー」は、全く無名の著者、青海エイミーのデビュー作だ。その原稿を読んだのは、プロジェクトメンバーの橘川さん、太田さん、平野さん、田原の4人しかいない。
無名の著者がはじめて書いた小説を、誰が読みたいと思うだろうか?
忙しい日常を送っていて、机の上に何冊も積読になっている人が、どうしてその原稿を読むだろうか?
どうやったら「ソーシャル編集者」が生まれてくるのだろうか?
参加型出版の考え方はよく分かる。大賛成だ。ソーシャル編集者のコンセプトも分かった。しかし、現実化するには、原稿を「読んでもらう」という最初の壁を乗り越える必要があった。
壁を突破する方法が見つからずに途方に暮れた。
(その3)に続く
「ジミー」は、希望である
「ジミー」参加型出版プロジェクト
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