矢来能楽堂ではこの三十年来、地元の子どもたちに能楽を知ってもらおうと、近隣牛込地域の数校の小学校六年生を対象に毎年[能楽観賞教室]を行っています。
この公演は「一人でも多くの、次代を担う子どもたちに能楽と接する機会を持ってほしい、日本の伝統文化に触れてほしい」という観世喜之の切なる願いから始まり、毎年毎年続けて参りました。
近年ではこの活動に対し行政からの助成を得ておりますが、長い間この観賞教室の公演にかかる費用は、全て観世九皐会理事長、観世喜之の個人的資金で賄っていました。「能楽の普及」に努める我々門下の鑑と言えましょう。
狂言『附子』と、能『土蜘蛛』。この三十年、牛込神楽坂地区で延べ一万人に及ぶ子どもたちが矢来能楽堂に足を運び、能楽を観賞してくれました。
この観賞教室がキッカケとなり、能楽を身近に感じてくださる方が少しでも増えていただけたら何より幸いです。