こんにちは、発起人を代表して松岡礼子がご挨拶申し上げます。クラウドファンディング開始から1週間を迎えました。まずは、この間、興味関心をお寄せくださった方々に、心より御礼を申し上げます。
スージー・リーは国際アンデルセン賞推薦資料のなかで、絵本とは「最も真剣な物語を最も洗練された形で表した、楽しい遊びのかたち」と述べ、自身を「絵によって命を吹き込まれた物語をとおして、読者と一緒に遊ぶ人」と評しました。こうした創作姿勢や絵本観は初期創作絵本『どうぶつえん』に力強くあらわれていて、彼女の作品の代名詞ともいえる、想像力と躍動感にあふれた少女像は、この作品で既に完成しています。
デビュー作はルイス・キャロル『ふしぎの国のアリス』の翻案といえるコラージュ型の写真絵本Alice in wonderlandで、2002年にイタリアEdizioni Corraini社から刊行されました。彼女の造型するアリスは短髪に黒髪、黒い瞳の少女で、アジアの少女を思わせます。翌年、同じ出版社から、後に「境界三部作」と呼ばれる作品群の第一作、Mirrorを発表します。その後、米国Chronicle Booksから第二作Wave(2008)と第三作Shadow(2010)を刊行し、それぞれニューヨークタイムズ・ベストイラスト賞を受賞します。言語の壁を越えてスージー・リー作品が広く愛されたのは、これらが「文字なし」絵本だったからだけではありません。彼女は絵本の「のど」を現実と虚構の境界に見立て、そのあわいに興じる黒髪のスカート姿の少女をいきいきと描きました。力強い線がかたどる少女は、駆けては踊り、踊っては駆ける、エネルギーの塊です。なにものにも支配されない、己の好奇心にのみ忠実な少女の動きが、世界中の読者の心をつかんだのです。
Mirror(2003)の主人公を10代の葛藤を抱えた少女とすると、Wave(2008)とShadow(2010)の主人公はぐっと幼くなり、就学前の女児といった感じになります。この幼い少女の原型が登場するのが、Mirrorの翌年に韓国の出版社ビリョンソから刊行された『どうぶつえん』でした。
幼女の一人称語りで展開する『どうぶつえん』には、「文字なし」絵本群では味わえない、言葉のユーモアがあふれています。これまでに、米国、仏国、西国、台湾、中国で翻訳された本作は、来年で刊行から20年を迎えます。このタイミングで日本語訳『どうぶつえん』を世に送り出し、より多くの人とスージー・リー現代絵本の魅力を共有したいと考えました。
これから10週間余り、スージー・リー現代絵本『どうぶつえん』がひとりでも多くの人の手元に届くよう、CF活動に注力して参ります。このページをご覧のみなさま、どうかプロジェクトのゴールまで応援いただきますよう、よろしくお願いいたします。
『Alice in Wonderland』(Suzy Lee)
『MIRROR』(Suzy Lee)
『Wave』(Suzy Lee)
『SHADOW』(Suzy Lee)