2013年に日本でサービスデザインネットワーク日本支部を立ち上げ、同支部の共同代表でもある株式会社コンセント 代表取締役 長谷川敦士さんより、応援メッセージをいただきました。ご自身もサービスデザイン関連の書籍の監訳などをされている、日本のサービスデザイン実践者の草分け、長谷川さんに『Designing for Service』の魅力について語っていただきました。
私の読んだところでは、本書では現在のビジネスが直面している問題・課題の解決、ではなく、これからの社会やビジネスが5年後10年後向き合っていくことになるであろうテーマを扱っていると感じられた。
こういった仮説や問題提起を取り扱っていくためには、ビジネスにおいては社会実験と社会実装を、大学など研究機関においては研究と理論構築を行う必要があるが、サービスデザインの領域としてのユニークネスは、この両輪が協力しながら発展してきており、現在進行形でもそれが続いているところにある。
ビジネスは提示されているような新しい枠組みや仮説を取り入れていかなければいずれ陳腐化してしまうし、研究は実際に実ビジネスとしての応用をしなければ、強度のある理論構築は難しい。どちらが欠けても成立しない。本書はService Design UK に属するリサーチャーにより書かれた本であるが、実践的なケーススタディと理論研究からの提言が統合された、サービスデザインらしい書籍と言える。
冒頭で述べたように本書で扱われているような課題やテーマは、これから先にマーケティングや事業開発の基本リテラシーになり得るような内容を含んでいる。より複雑化するサービスエコシステムや新たに生まれ来る社会課題に対応していくために、日本においても、デザインに関わる人だけでなく、広く多くの人達に読まれ、未来に向けたインサイトを与えるものになることを期待したい。
長谷川 敦士(株式会社コンセント代表取締役/インフォメーションアーキテクト)
1973年山形県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(Ph.D.)。
素粒子物理学、認知科学の分野を経て株式会社コンセントを設立。
情報アーキテクチャ設計を専門分野としながら、サービスデザイン、ユーザー体験デザインを実践。
著書に『IA100 ユーザーエクスペリエンスデザインのための情報アーキテクチャ設計(BNN新社)』。監訳書に『THIS IS SERVICE DESIGN THINKING. Basics - Tools - Cases (BNN新社)』など。
武蔵野美術大学、多摩美術大学非常勤講師。人間中心設計推進機構理事。
Service Design Network Japan Chapter代表。