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鹿の命を余さず活かす、信州諏訪発レザープロジェクト

森を駆ける代償:家畜にはない「生きた証」

皆様、こんにちは。ケルビムの堀内です。 連載第2回は、野生の鹿たちがその身に刻んできた「履歴書」の正体に迫ります。

■ 守られた「牛」と、奔放な「鹿」

私たちが普段手にする牛革などの多くは、管理された牧場で大切に育てられた家畜のものです。彼らは柵の中で守られ、皮膚に大きな傷がつくことは稀です。
そのため、一枚の大きな皮から効率よく、均一で綺麗なパーツを切り出すことができます。

しかし、信州の山々を縦横無尽に駆け巡るニホンジカは、全く違います。

■ 全身が「キズ」の履歴書

今日掲載した写真(※お手元の写真をぜひアップしてください)をご覧ください。 皮の表面を走る無数の線。これは鹿たちが深い藪を強引に突き抜けた際についた「枝擦れ」の跡です。また、ゴツゴツとした岩場を跳ねる際につく擦り傷や、繁殖期に雄同士が激しくぶつかり合った際の角の跡も残っています。

さらに、野生動物にはつきものの寄生虫による小さな穴。 これらすべてが、彼らが信州の厳しい自然界で、自らの足で立ち、生き抜いてきた「証」なのです。

■ 「歩留まり」という産業の壁

こうした傷や穴がある場所は、通常の革製品には使えません。 大きな皮に見えても、傷を避けてパーツを切り出していくと、実際に製品として使える面積(=歩留まり)は、家畜の皮に比べて極端に少なくなってしまいます。

「手間がかかる上に、使える場所が少ない」

この経済合理性のなさが、これまで多くの鹿革が有効活用されず、山に埋められるか、廃棄されてきた大きな要因でした。


私たちは、この「歩留まりの悪さ」を、技術とアイデアで突破しようとしています。 「傷があるからダメ」なのではなく、「傷があるからこそ、その命を尊び、工夫して使い切る」。その挑戦の記録を、明日以降もお伝えしていきます。

明日の第3回は、「100kgの巨体と格闘する:プロのハンターと職人の執念」です。 山から里へ、命を運ぶことの過酷さについてお話しします。

明日もぜひ、ご覧ください!


信州エシカルディアスキンプロジェクト ケルビム 堀内 智樹

2026/04/07 16:13