世界の中の日本文学、そして日本語に光を当てる――
文芸誌『jem』言葉の未来を切り拓く第3号を刊行したい!

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文芸ZINE『jem』第3号を刊行するためのプロジェクトです。
紙書籍の発行:2026年11月下旬(予定)/ 電子書籍の発行:2026年12月中旬(予定)
 

文芸誌『jem』とは?

『jem』主宰の木村夏彦と申します。弊誌は「日本語文学の普及と、海外に眠る煌めく原石の発見のための文芸誌」を謳い2024年に創刊、ZINE(自主制作物)として一年に一回というペースで刊行を続けています。日本文学を海外に届けること、また海外の知られざる佳品の紹介の両方を柱に据えています。
 
世界の中の日本文学に光を当てることを願い、前号ではアラビア語、インドネシア語、ポーランド語、フィンランド語、フランス語、英語(現代詩)、中国語(簡体字、幻想文学)という計7語圏についての論考を一挙掲載しました(フランス語はメールインタビュー)。詳細は公式noteの2号内容紹介をご覧ください。創刊号以来、名だたる賞の受賞者やシーンを牽引する書き手たちが集っています。

友人の助けを多々借りていますが、編集部員は私ひとり。経験豊かな職業編集者ではなく、本業と並行しながらの手探りでこれまでのプロジェクトを実現させてきています。雑誌を刊行したきっかけ、経緯については『群像』2025年5月号にエッセイを寄せる機会をいただきました。

 

vol.3の内容

さらに充実した内容の第3号は「表記の森へようこそ!」、「『世界の中の日本文学』の新地平」、「海外文学と言語教育の交点」と三本立ての企画を用意しました。

「表記の森へようこそ!」は、日本語表記の自由さを探索していく特集です。創刊号では、「偏愛のルビ」について様々な寄稿者に思う存分語ってもらうアンケートが好評を博しました(公式noteへのリンク)。今回はこうした試みをさらに一歩進め、日本語表記のすがすがしい自由さと文学表現との関係を探究してゆきます。具体的にはどのようなものか?編者の私が発見した、ユニークだと感じる例をいくつかご紹介いたします(かならずしも誌面で扱うものとは限りません)。
 
風狂ふ桜の森にさくら無く花の眠りのしづかなる秋
 
とは水原紫苑による短歌ですが、この歌はどうやったら外国語に訳せるのか?ひとつの歌のなかで「桜」と「さくら」を書き分ける心性とはどのようなものなのか?
 
あるいは、妙に心に残る翻訳家のことばの択び方。栩木伸明さんは、翻訳でも論考でも「思う」を「おもう」とひらがなで表記し、浅倉久志さんが訳すラファティの短篇では、登場人物は「ゼッキョー、ゼッキョー」と絶叫します。国内の小説に目を転じると、たとえば江戸川乱歩作品における「蟲」と「虫」の違いは無視できないはずです。市川沙央さんの『ハンチバック』は「健常者優位主義」という語句に「マチズモ」とルビを振り、関心を集めました。

複数の文字を使い分ける言語でなければ、「この箇所はひらがなにしようか」などという発想はそもそも生まれないはずです。日本文学は海外でも人気を博していますが、そもそも日本語とはどのような言語なのか?翻訳で読んでいる読者には伝わりづらいかもしれない、日本語という森の奥深くに分け入っていきたいのです。
 
特集では、ウェブ連載時から話題を呼び今年単行本が上梓された『日本語表記のアーキテクチャ』の著者、今野真二さんとクリストファー・ローウィさんによる、表記の果てしない奥深さを検討するロング対談を掲載します。また詩人や歌人、翻訳家をはじめとする回答者に、独創的だと感じる表記について語りあかしてもらう大アンケートを設けました。さらには異ジャンルの書き手によるチャレンジ創作を掲載します。「漢字をひと文字だけ使用し、残りの文字はひらがなで短歌を創作する(小原奈実さん)」など、コンセプトや「しばり」の存在からは、思いがけない未知の世界が出現するかもしれません。
 
第二特集「『世界の中の日本文学』の新地平」では第一線で活躍する国内外の翻訳家、研究者に協力をお願いし、アルメニア、タイ、台湾における日本文学受容、また中国における日本SF受容についての論考を一挙掲載します。前号に引き続き、高度に専門的な知識を有する研究者と翻訳家を執筆陣に、信頼性の高い、充実した記事を集成します。
 

小特集「海外文学と言語教育の交点」では、

・吉田恭子さん、田中裕希さん、アレクサンドラ・プリマックさんによるクリエイティブライティングと第二言語で書くこと、そして若い世代に創作を教えることをめぐる座談会
・英語教員としての経験を結晶化させた初歌集で今年度の現代歌人協会賞を受賞した、貝澤駿一さんによる短歌新作
・高柳聡子さんの論考、シルヴィーディー・サラさんによる日本におけるパレスチナ文学の受容と翻訳についての論考

などを掲載します。すでに到着した記事をひとつ紹介すると、「英詩の授業で起きること―教室からの報告―」は「英詩の知識を持たない学生たちも、詩を読む力を持っている」という考えのもと、詩を教材にした授業を長年大学で実践してきた柿原妙子さんが、自身のノウハウについておしみなく書いてくださっています。教室で実際に詩を使ってみたい、という教師の方にとってもきっと参考になる、役立つ記事に仕上がっています。

特集外の翻訳小説として、現代インドネシア文学の最前線をひた走る鬼才、ジギー・ゼシャゼオフィナザブリスキー「火葬場」(西野恵子訳)を掲載。また、日本語翻訳という営みそのものを再考するための特別企画として、1970年代に雑誌に掲載されたきりの多田智満子訳・ジュール・シュペルヴィエル「ミーノータウロス」を復刻します。

 

プロジェクトに込めた思い

クラウドファンディングとは単なる本の事前予約ではなく、社会的な意義のあるプロジェクトに対してこそ行うものであると信じています。
 
第二特集では、英語圏とは異なる力学が活発に働いていると思われる地域における、日本文学の拡がりを明るみに出していきます(アルメニアでは、日本文学は長くロシア語を経由して重訳として紹介されてきたそうです)。表記の特集では、西洋の言語学だけではおそらく捉えきれない日本語の姿を追いたいと考えています。また、「厳しい」という言葉が出版界で合い言葉のようになっている現在、「買い支える」といった発想とは別のかたちで遺産を手渡していく試みとはどのようなものか。これを探究していくのが教育と文学の関係をめぐる小特集です。すべて、いまだからこそ世に問う価値のある企画であると考えています。

 

クラウドファンディングに挑戦する理由

寄稿者にお支払いする原稿料の改善や、刊行するのに最低限必要な経費の捻出がおもな目的です。大手出版社では実現しづらい企画の構想がまずあり、それをどう実現に移していくか、という順番でいつも作業を進めています。

図書館に通いつめ、膨大な時間を割いたリサーチの結果出来上がっているのが弊誌の日本文学受容関係の論考群です。国際交流基金のライブラリー、ワルシャワ大学日本学科の図書館においても弊誌は資料として活用されています。「こういう活動であれば、なにがしかの機関から助成金はもらえないのか」との言葉も時おりもらいますが、同人誌である弊誌が申請できるようなものは見つけられていません。2号に掲載されたような重厚な論考群は、学術的な媒体に投稿するほうがメリットはずっと大きいかもしれません。それでも、こんな小さな雑誌に本気で力を注いでくださっています。

昨年、2号の企画段階から、「予定が詰まっているからいまは無理だが、2年後、2027年なら書けるかもしれない」とまで言ってくださっている研究者もいます。私は原稿をお預かりする身分にすぎませんが、50年後にも専門機関に置かれている、永くアーカイブされる価値のある号を今回も目指します。昨夏、2号刊行のためクラウドファンディングに初挑戦し、支援総額は目標額の167%を達成しました。ご支援・ご協力をくださったすべての方に厚く御礼申し上げます。



今回のプロジェクトの支援金については「原稿料」「翻訳費」「編集・デザイン・DTP費」「印刷・製本費」「発送・流通・宣伝費」など、本の制作からお届けにかかる費用に使用させていただきます。

 

発起人について


木村夏彦(きむら・なつひこ)
慶應義塾大学文学部英米文学専攻卒業。普段は英語教師として、中高生を中心に英語を教えています。大学時代はアメリカ文学のゼミに所属していましたが、シンボルスカなどポーランドの詩やボルヘス、オクタビオ・パスなどのラテンアメリカ文学、マルセル・シュオッブなど「古め」のヨーロッパの幻想小説、それにSFなど、国を問わず詩と小説を熱愛していました。卒業論文はジェンダーSFについて執筆しました。

学業そっちのけで大学図書館の薄暗い地下書庫にこもり、青春の貴重な数時間をそこで費やすということも珍しくない、ちょっとオタクで後ろ向きだけど楽しい数年間でした。地理的には小さな国々にも、読者に発見されることを待っている偉大な才能が星の数ほど眠っている。そうした確信は、私の物の見方を根本的にかたちづくっています。当時から文芸イベントに足を運んではいましたが、自分で創作をするでもなく、長年単なる愛読者であり続けてきました。

変化の決定的なきっかけになったのは、オーストラリアでの半年間の語学留学経験でした。日本文化(文学を含む)に関する質問をクラスメイトから絶えず投げかけられ、どうすれば誤解されないように外国語で伝えられるかを帰国してからも日常的に考えるようになりました。

時おりしも、2010年代に日本文学の海外での読まれ方は大きく変容していきました。非力な自分も、雑誌というかたちで他の方に寄稿をお願いすれば、発信する側になれるのではないか。ある意味では日本の外で起きているムーブメントに背中を押されるかたちで、自分でも『jem』という雑誌を立ち上げてみたのです。

 

執筆者、掲載する作家の紹介

まずは3名の方をご紹介します。寄稿いただく方の残りの略歴は、活動報告の欄で少しずつ紹介していきます。


アストギク・ホワニシャン(Astghik Hovhannisyan)
アルメニア、エレバン生まれ。日本学者、翻訳者、学術博士。ブリューソフ国立大学(アルメニア)准教授。主な翻訳に村田沙耶香『コンビニ人間』(2020)、多和田葉子『献灯使』(2023)、川上未映子『夏物語』(2025)など。

黄耀進(こう・ようしん)
早稲田大学非常勤講師、翻訳者。訳書に若林正丈『台湾の半世紀――民主化と台湾化の現場』(『臺灣政治有意思  若林正丈的臺灣民主化現場』、2025)、『世界哲学史8——現代 グローバル時代の知』(『世界哲學史 8 現代篇 全球化時代的哲學:現代與後現代的對話』、2025)、『アジア人物史 第11巻 世界戦争の惨禍を越えて』(『【亞洲人物史11】走出世界大戰的慘禍〔19—20世紀〕』、2025)など。

立原透耶(たちはら・とうや)
小説家、翻訳家、大学教員。『宇宙の果ての本屋 現代中華SF傑作集』(新紀元社・編)、『紅色海洋』(韓松・新紀元社・監訳)、『長安のライチ』(馬伯庸・文藝春秋・監訳)、中華圏SF紹介・翻訳により日本SF大賞特別賞受賞。


制作スケジュール

書籍情報

・仕様はA5二段組、ページ数は180ページ以上になる見込みです。
・装画、表紙デザインはYOUCHAN(トゴルアートワークス)さんが担当。

2号書影(参考)

 

リターンについて

◆ミニエッセイ集「私のことのは散策記」
翻訳家・詩人などさまざまな書き手の方に「言葉についての発見」をテーマに書き下ろしてもらった、限定のミニ電子エッセイ集(各原稿は1700~1800字程度、論考などではなく短めの随筆の集成です)。PDF・ePubの小冊子。執筆者は金沢英之(古代文学研究)、吉良佳奈江(翻訳者、韓国語講師)、西野恵子(翻訳者)、廣岡孝弥(翻訳者など)、吉田隼人(歌人、エッセイスト)、劉佳寧 (澁澤龍彥・幻想文学研究者、翻訳者)ほか現在交渉中(計8名ほど)+リターンで寄稿権を購入くださった方最大2名。寄稿いただく方の略歴は、活動報告の欄で少しずつ紹介していきます。完全な限定制作ではなく、それぞれの文章は今後寄稿者の単行本などに収録される可能性があります。

◆『jem』に集った歌人、俳人、詩人によるあなたのためのオリジナル作品
今号に寄稿くださる歌人、俳人、詩人の方(全員ではありません)があなたのためのオリジナル作品を創作して、ミニ色紙に直筆したものをプレゼントします。

以下の五名の作者のなかからご希望の方をおひとりご指名し、さらに「ことば」をご指定ください。その「ことば」を盛り込んだ作品を創作いただきます。カテゴリが決まっている方と、好きな単語をひとつ選んでいただける方の二種類のオーダー方法があります。

石川美南さん・吉田隼人さん…好きな単語をひとつ指定
小原奈実さん…好きな鳥
貝澤駿一さん…好きなスポーツ
佐藤文香さん…好きな飲み物(とくにアルコール飲料がお得意とのこと!)

例:小原さんなら「スズメ」、貝澤さんなら「バレーボール」、佐藤さんなら「焼酎」など各カテゴリのなかで「ことば」をご指定ください。佐藤文香さんは俳人・詩人として活躍中ですが、今回創作くださるのは俳句です。ほかの四名の方は短歌を創作くださいます。

・ご注文一口あたり、色紙は一枚、指定いただける作者は一名です。ご注文の際、「どの作者を指名するか」をフォームでお伝えください。ご指定の「ことば」は申し込み時ではなく、クラウドファンディング終了後の9月にお伺いいたします。
・この企画のために作った作品は、のちに作者の作品集に収められることがあります。著作権はそれぞれの作者に属します。
・色紙には作品とサインが直筆されます。ミニ色紙は発起人が用意する市販のものです。柄・サイズなどにつきましては追っておしらせします。
・色紙のお届け時期は紙書籍と同時ではなく、12月になることがございます。
・それぞれの作者が対応いただける個数には限りがあるため、注文多数の場合は新規申し込みをストップすることがあります。

◆世界にひとつだけ!YOUCHANオリジナルドローイング※限定10個
『jem』表紙画を手がけるYOUCHANさんがあなただけのためのドローイングを描いて、その原画をプレゼントします。

・大きさは136×120mmのミニ色紙サイズです。 
・オプションとしてご希望のお好きな言葉を入れることができます(値段は変わりません)。作家の名言、自作の詩や短歌など。日本語は40文字、英語(ローマ字をベースとする言語)は70文字まで対応いたします。 
・どんな絵が届くかは到着までのお楽しみです。あなたの選んだ言葉をYOUCHANさんがイメージにふくらませてくれることもあるかも!?言葉なし(ドローイングのみ)でももちろんOKです。 
・著作権の譲渡はしませんので、お渡しする原画を元に本やグッズなどを作ることはご遠慮ください。飾って愛でていただければと思います。スキャンした原画のデータはYOUCHANさんが後日商業利用することがあります。 
・引用は著作権の失効した作家の言葉に限ります。翻訳権が絡んでくると複雑になるため、海外作家の場合は原文に限らせていただきます。権利が失効したかどうかは、ご自身での確認をお願いします。

◆オンラインイベント
・書籍刊行後に開催予定の出版記念オンラインイベントにご招待します。2026年12月~2027年1月の週末の夜を予定。
・クラウドファンディングで申し込んでくださった方限定のイベントではなく、ほかのプラットフォームを通じて参加者を募ることがございます。その場合、こちらのサイトを通して申し込んでくださるほうがイベント参加料が格安になるように設定します。
・編者に加え、可能であればゲストをお呼びします(ゲストは3号の寄稿者とは限りません)。
・オンラインイベントの開催日時などの詳細は、決まり次第お知らせいたします。
・当日参加できない方のため、オンライン配信後一定期間、録画をご視聴いただけます。

◆書籍(奥付)に名前を掲載【限定10名】
・プロジェクトをご支援いただいた証として、本の奥付にspecial thanksとしてご希望のお名前(個人名・団体名ともに対応可)を掲載いたします。
・お名前はすべての本に印刷されます。

 


✴︎クラウドファンディングの 参加方法について