「OLDnews」刊行プロジェクトをご覧いただき、誠にありがとうございます。
発起人の中田郁也(なかだいくや)と申します。
静岡の港町で育ち、現在は編集者として働いています。
早速ですが、「OLDnews」を刊行したい理由と、皆さんと作りたい雑誌や雑誌作りの楽しさについてお話させてください。
「お父さん、癌になっちゃったみたい」
2018年12月。電話口で母からそう告げられた時、父と二人でドライブに出掛けた日のことを思い出していました。
……FMラジオが掛かった車内、頬を撫でる潮の香り、サングラスを掛けた父の横顔。私は映画のワンシーンを真似て窓に肘をつき、遠く見えるまぶしい太陽を眺めていました。
目的地も会話もないドライブは「おとな」を感じさせてくれる父からの贈り物でした。
父に会いたい。
そんな懐かしくも悲しい思いに駆られましたが、面と向かって父と話をすることは、なかなか気恥ずかしいものだとも感じていました。なんと切り出していいものなのだろうか。
電話を受けてから数日経ったある晩、「取材」という形で父の話を聞くことを思いつきました。他人行儀な方法ではありますが、口実としてはそれほど悪くないだろう、と。
取材に当たり、父が好きだと言っていたものをリストアップしていく作業は、さながらとっておきのプレゼントを探しているかのような気分でした。
かつて私に編集のイロハを教えてくれた編集長が、仕事で悩んでいた時期の私にこんな言葉を贈ってくれました。
「中田君、サッカーが好きだったよね? 編集者の仕事はね、まだサッカーを知らなかったメッシに、サッカーの楽しさを伝えること。自分がメッシみたいになるんじゃなくて、その人すらまだ見ぬ才能を見つけて、影から応援すること。それが編集者の仕事だよ」
その言葉を胸に、私は心の中で父と向き合いました。父の一番の理解者になりたい。せっかく記事を作るなら、自慢の父をみんなにも知ってもらいたい。
今にして思えば、人生で最も父のことを考えた日々でもありました。
土日も働きづめだった父のことを、幼いころから勝手に遠い存在だと考えていましたが、父との思い出を振り返るほどに、いかに愛されていたかを知ることとなりました。
言葉には出されない愛がそこにあったんだと思います。それを記事にしたい。強くそう思うようになっていました。
……一方、そのころの私たちが知る由もなかったウイルスが、ゆっくりと世界を覆い始めていました。
ぼんやりと眺めていたテレビやネットには、加速度的に悲観的なニュースが溢れかえるようになり、気がつけば、人と人とが顔を合わせることが、誰かを悲しませる世界に変容していました。
ウイルスの蔓延状況は日に増して悪化し、会うことが一生叶わぬ可能性も高まりつつありました。
緊急事態宣言が空けるタイミングしかないだろうと家族で結論を出し、宣言が解除されてから、父への取材を行いました。
撮影場所は実家の近くにある海を臨んだ公園。一度だけ二人で訪れたことがある場所です。
取材のテーマは、家族愛。
父は、闘病生活を通じて家族への愛を再認識できたと語ってくれました。
家族のことを父はこう表現しました。
「『ありがとう』という言葉に凝縮されているんじゃないかな。家族で交わされるその言葉は、伝える前から伝わっているんだよ」
私はハッとしました。
ああ、そういうことなのか。言葉にする必要がないこともあるんだ。他者と通じ合わないからこそ、人は言語を持つんだ。
私が父に取材するつもりが、すっかり立場が逆転してしまったような気持ちでした。
私もまだまだ未熟な編集者ですが、心を込めて記事を作りました。
よかったら出来上がった記事をご覧になってください。
(↑リンク先に記事を掲載しています)
いつしか私は父との会話を心から楽しんでいました。最高の友人と過ごしたようなひと時でした。
帰りがけに父から言われた「ありがとう」の一言は、生涯、忘れることはないと思います。
取材後、古くからの友人グループにこの出来事を自慢すると、こんな返信がありました。
「なんか楽しそうだな!」
「時間があったら俺の親父も取材してよ」
「うちはおふくろで!」
「俺の上司の営業論なんてどうよ。ビジネス本に載ってるやつみたいな」
「雑誌ってそんな風に作れるんだな」
それらは思ってもみない返信でした。
誰しもに「話を聞いてみたい人」や「知ってほしい大事な人」がいるのかもしれない……
そう感じた次の瞬間、人と人とを雑誌で繋げるアイデアが思い浮かびました。
「大事な人をみんなで自慢し合える雑誌が作りたい!」「その人が生きた証をみんなで取材したい!」
それは、お互いを大事にしている者同士で作り上げる雑誌(私もその現場に参加したい!)、スーパーマーケット的消費物ではなく、誰かの本棚に一生収まる雑誌、制作者と読者の垣根がない雑誌。
私は父にプレゼントを贈るような気持ちで記事を作りました。
雑誌をギフトボックスに見立てて、みんなで「プレゼント」を詰め込んでいくというのはどうだろう。作るほうも読むほうも楽しめる雑誌になるのではないか。
アイデアは膨らんでいきました。
その雑誌には、「身近な人だからこそ聞けなかった話」や、「みんなにも聞いてほしい大事な人の話」を掲載したい。
その人をその人たらしめることを記事にする――。人は経験することで言葉の説得力を獲得していく。その人だから言う価値のある言葉を広げていきたい。
その人の一度きりの人生を取材したい!
「有名な人」が載っているから雑誌が成り立つわけではない。最も個人的なことは最もクリエイティブなことだと私も信じています。
例えば、癌と闘う父が言う「もっと長く生きたい」という言葉は、私が言うその言葉よりもずっと悲痛な力を帯びています。
ひょっとしたら、その言葉を聞いて何かしらの行動を取る方がいるかもしれない。
生きた知恵と経験が詰まった雑誌を作りたい。
誰かの宝物をピカピカに磨き上げるように……。
雑誌の輪郭がぼんやりと見えてくると、雑誌に掲載したい話の共通点を見つけました。
それらは「もっと早くに聞きたかった話」だということ。
父の取材中にもこんなことがありました。
取材に同席してくれた姉と母は、何度もこう口にしていました。
「そうだったんだ。それは知らなかったなあ」
「その話、言ってくれれば良かったのに」
ひょっとしたら、この取材がなければ、家族でさえ知らない話があったのではないかと思います。
「そんな面白い話なら、もっと早くに聞かせてくれても良かったのに!」
こんな声が聞こえてくる話は、世の中に見えないのに溢れかえっています。
そんな意味を込めて、この雑誌を「OLDnews」と名付けました。
聞くことが遅かったという読者の視点です。高齢者の話が載っている雑誌ではありません。
制作姿勢も同様です。「OLDnews」はみんなで作っていきたい雑誌です。
みんなで誰かの宝物を発見して、ピカピカに磨いていきます。
コミュニケーションの出発点となる雑誌を作りたいという思いが、「OLDnews」を刊行したい理由のひとつです。
Vol.1は「大事なあの人」というテーマで制作予定です。
一歩間違えたら、自画自賛で溢れかえったつまらない雑誌になり得ます。しかしながら、誰かの自慢を第三者が面白く語れば、「武勇伝」に早変わりします。
大事なことは、表現する角度だと考えています。ご本人すら気がつかなかった宝物を掘り起こしてみせます。
面白い雑誌を作っていきますので、どうか皆さんのお力添えのほど、何卒、よろしくお願いします。
このようなご時世なので、取材はもちろんのこと、人と人とが対面することが難しい状況には違いありません。
可能な限り感染リスクを排除したうえで、最高の形を提供することに努めます。
続いて、取材・記事作成・その後の展開についてご紹介します。
皆様には事前取材をお願いしたいです。
一緒に世界にひとつしかない記事を作りましょう!
まずは取材シートを元にして、記事の「種」を集めてください。もちろん、編集部もお手伝いします。
ひょっとしたら、記事を作成するにあたって、意外な一面を発見できるかもしれません!
「そのお話は、他人を面白がらせます」
内容やデザインに決まりはありません。
・取材対象様が大事にする「コト・モノ」や、特技(レシピやハンドメイドアイテムなど!)
・取材対象者様が描く絵や写真など
事前取材シートをご記入いただき、メールでお送りください。
取材シートを元に、記事のテーマを設定します。
内閣官房が発信しているコロナウイルス感染対策を遵守しながら、取材を行います。
取材場所は、ご自宅やスタジオ(費用は要相談)など、十分に喚起が行える場所を前提にご相談させてください。(リモートでの実施も可能です)
取材はカメラマンとライターの二人で行います。
誰が読んでも面白い記事に仕上げていきます。
「こんなページにしてほしい!」というご提案も大歓迎です。
将来的にウエブサイトへの掲載も予定しているので、タイムレスな誌面を目指します。
記事の最後に、郵便やメールで感想を送れる仕組みを作りました。
掲載者と読者の方とのやりとりには、編集部が仲介しますので、誹謗中傷の心配はございません。
⑤おまけ
撮影時、皆様にもご同席頂けましたら、集合写真も撮影いたします。
こちらは私の家族です。
プロカメラマンによる撮影は一生の記念になります。
以上がご支援いただきたい内容と雑誌作りについてです。
誌面作りに関してご不明点がありましたら、何なりとお申し付けください。
「OLDnews」は段階的に規模を大きくしていきます。
Vol.1以後も、日本を元気にできるようなテーマで雑誌を作っていきますが、雑誌作りは手段の一つです。
まずは安定した広告収入を確保しつつ、読者獲得に努めます。
OLDnewsのミッションを二つ紹介させてください。
①社会の課題を楽しく発見&解決
日本は「高齢化社会」が進んでいます。
ネガティブに語られることもありますが、生きた知恵と経験に満ち溢れた社会とも言えます。
そんな生きた知恵と経験をまとめていくことが、「OLDnews」の役割だと考えています。せっかくの知恵や体験も共有されていかなければ、無かったも同然です。
いまの日本をより良い国にしていくためには、社会の課題を楽しく建設的に話せる場所が必要だと考えています。そのような場を「OLDnews」は提供していきます。
②誰もが簡単に雑誌が作れるシステムの普及
誰が読んでも面白いと感じる記事を作ることで、年齢にとらわれない読者を多く獲得できます。それは同時に、掲載者について知ってもらえる機会が増えることも意味しています。
「読んだ」人も「載った」人も楽しめることで、雑誌が大きくなっていくと考えています。
初期段階では、優れた編集者の方々に記事の作成を依頼し、ある程度の記事数と広告掲載を見込める閲覧数を確保します。
記事数・知名度が十分に高まった段階で、記事を広く募集するシステムを構築予定。
「カメラマン・デザイナー・編集者+OLDnews編集部」でチームを組んでもらい、そのチームが最も注目している人物を取材。それを「OLDnews」のWEBに投稿してもらうというシステム(「回覧板」と名付けました)です。
参加条件は、大事な人を紹介したいという強い思いです。記事制作の経験は必要ありません。雑誌を作る楽しさをみんなで分かち合えます。
それだけにとどまらず、投稿記事は、ネットで自由に閲覧でき(一部有料)、読者はその中から好きな記事を集め、表紙を決め、世界に一冊しかないオリジナル雑誌を作れるサービスも提供予定です。雑誌作りがもっと身近になります。
もちろん、雑誌が作られるたびに、記事作成チーム、取材対象者に印税が入るような仕組みも考案中です。
紙にこだわらず、ウェブと「行き来」することで、多種多様な試みをしていくことができます。
【目標額】900,000円
内訳
印刷・製本:300,000円(1200部)
誌面制作費:500,000円
経費:100,000円(取材交通費、機材調達など)
目標金額達成以後の支援金は、Vol.2以後の制作費、WEBサービスの構築費とさせていただきます。
プロジェクトのゴールは、Vol.1の刊行ですが、以後は隔月で刊行していく予定です。
広告掲載や定期購読者を広く募集し、自立した運営のもとに配布・設置し、日本中の声なき物語を掲載していきます。
ゆくゆくはISBNコードを取得し、全国の書店さんを通じて、広めていきます。
目標は日本を世界で最も元気な国のひとつにすることです。
【雑誌概要】
A4変形(297*220)
表紙:F1カード(斤量155.0、K/Y)
本文:コート(76.5、菊/Y)
発行部数(Vol.1):1200部予定
内訳
リターン:750部
営業用見本誌:150部
設置・配布用:150部
在庫:150部
目次(仮)
【特集】
・人を楽しませる記事の作り方
・日本人の作法
【イベントガイド】
【レギュラー企画】OLDnews物語
→リターンの取材企画を掲載
【コラム】
など
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。
<デザイン:元尾明>
<写真撮影:新井章大>
■プロジェクトメンバー
中田郁也
1987年、静岡県静岡市生まれ。
これまでに、「syunkonカフェごはん 7」、「無印良品のベストアイテム 今すぐできる、素敵なアイデア実例」(宝島社)などの編集に携わる。
趣味は6歳から始めたサッカーとフットサル。フットサルチーム「OLDnews」運営も担う。