NECの銘機A-10設計者が贈るハイブリッド真空管アンプ【A-10SG TUBE】
独自開発のスーパークリーン電源で真空管のリアルサウンドを実現
スピーカー・リザーブ電源セットで音質のグレードアップも

image

NEC A-10 の設計者が作るアンプ第二弾は真空管を搭載!

A-10SG TUBEは「本来の真空管の音を誰でも楽しめるアンプ」をコンセプトに開発されたハイブリッド(真空管+半導体)アンプです。
スマホやイヤホンとは一味違う、アナログならではの上質な音体験をA-10SG TUBEは実現します。
オーディオの世界で『良い』とされている真空管の良さを余すことなく届けるため、設計に徹底的にこだわり抜きました。

これまでの一般的なハイブリッド真空管アンプでは、高電圧で真空管を駆動させることができず、低電圧での動作となり、真空管がもつサウンドを生かしきれていませんでした。
A-10SG TUBEでは独自のスーパークリーン電源回路を新開発することで、アンプ内部で非常にクリーンなDC200Vを生成し、高電圧ドライブを実現しました。
 

更に、左右チャンネルで電源を分離することはもちろん、真空管ドライブ用に別系統で電源を取り、よりクリーンな電源構成を目指しました。
これにより、真空管のもつ本来の「味」を引き出し、立ち上がりの早い、ダイナミックでノイズレスなサウンドを実現しました。

ドライバー1本で真空管の交換も手軽に行え、それぞれの真空管が持つサウンドを楽しむこともできます。

3年前のプロジェクトで大好評を頂いたA-10の設計思想を受け継ぐアンプ「A-10SG」の第2弾として、「真空管を搭載せよ!」というプロジェクトが雑誌『ステレオ時代』の編集長、澤村信さんの音頭で2019年6月に開発進行となったA-10SG TUBEはそこから15ヶ月の開発期間を経て、ようやく開発完了を迎えることができました。


今回のA-10SG TUBEのコンセプトは「高電圧で奏でる本来の真空管の音を誰でも楽しめるアンプ」。雑誌付録の基板で読者の方が組み立てることを前提としたA-10SGと比べ、開発上の制約も大幅に取り払われ、NECの名機A-10の息吹を感じるハイブリッドアンプ(真空管+半導体)がここに誕生しました。

従来のハイブリッドアンプはここが違う!
 高電圧を球にかけるA-10SG TUBE

 真空管は高電圧をかけて動作させることを前提としていますが、多くのハイブリッドアンプでは低い電圧で真空管をドライブしています。真空管は低圧でも動作させられますが、扱える信号レベルは圧倒的に低くなり本来の良さが消えてしまいます。(ギターアンプ等ではわざと低圧で使って信号を歪ませる技を使いますが、目的が違います。)
 A-10SG TUBEでは後述のスーパークリーン電源回路を新開発し、DC12Vから非常にクリーンなDC200Vを生成させることで、高電圧ドライブを実現、真空管の良さを余すところなく引き出すことに成功しました。


また、このことにより、真空管で扱える信号レベルが非常に大きくなったため、入力された音楽信号をダイレクトに真空管に入力し、出力側でボリュームコントロールすることで、ノイズレベルを低減させています。

 

前代未聞!3つの電源を使うA-10SG TUBEの電源回路

   ▲A-10SG TUBE リアパネル(DC入力が3つあり、付属のACアダプタも3個となる)

 A-10SGTubでは、アンプ回路用の電源2系統(Lch,Rch)に加え、真空管ドライブ用に1系統のDC入力を実装しました。このDC12Vは左右のアンプICと同タイプのトランスドライブ用ICに供給されます。このアンプICにはウィーンブリッジ回路で生成されたサイン波が入力されています。アンプICで電力増幅されたサイン波(400Hz)は新開発されたトランスの1次巻線に印加され、2次巻線(右左チャンネル専用巻線)にステップアップされたサイン波(百数十ボルト)を得ています。
 この2次巻線交流電圧を整流し、最終的にDC200Vを得て真空管電源としています。
サイン波のみで構成された新開発の電源回路は便宜上スーパークリーン電源と名付けました。スイッチングを伴わない純アナログ式の昇圧方式は、音楽再生に適したノイズレス電源です。

 


A-10SG TUBEの内部構造

 

 

ドライバー1本で真空管を変えて、自分だけの音を

A-10SG TUBEで使用している真空管は「12AU7X」です。これはギター用のアンプを取り扱っている楽器屋さんなどでも販売されているなど広く流通しているメジャーな真空管です。流通している価格も1本1,000円台と手軽に購入できます。本機はプラスドライバー1本でボンネットの側面部と背面部のネジを外すだけで真空管にアクセスできます。真空管はソケットなので抜き差しも容易です。

真空管を1つ変えるだけでも、サウンドは劇的に変化します。
あなた好みに真空管をカスタマイズすることで無限の音の可能性が広がります。


 

真空管とは何か

 
 真空管は100年以上の歴史がありますがそのルーツは白熱電球にあります。
 今回A-10SG TUBEに搭載した3極管を例にとると、その名の通り真空管内部に3つの極があります。それぞれカソード・グリッド・プレートと称しますが、ヒーターでカソードを加熱しプレートに+電圧をかけるとカソードからプレートに向かって電子(熱電子)の流れが発生します。
 カソードとプレートの間にグリッドという極を設けて、このグリッドを電圧制御すると制御電圧に応じカソードからプレートに流れる電流が変化します。この電流の変化を電圧に変換するとグリッドに加えた制御電圧に応じた電圧が取り出せます。この取り出せる電圧が、一般にグリッドの制御電圧に比べ大きいため、信号増幅素子として真空管が利用できます。
 ヒーターを加熱することで電子を飛び出させる必要があるので、白熱電球と同様に、ヒーターが燃焼してしまわないよう、球の内部を真空にしています。このことから真空管と呼ばれています。

 

オーディオの世界で真空管が良いとされている理由


 アンプに関して言えば、“良いもの”は真空管アンプでも半導体アンプでも差はそんなにありません。しかし、アンプを設計する際、必要な素子の数で言うと、半導体アンプに比べ、真空管アンプの方が圧倒的に少ないという特徴があります。
 例えば、複合管(電圧増幅部と電力増幅部が一体となった真空管)を使えばたった2本でスピーカーが鳴らせるステレオアンプが完成します。またLPレコードの再生に必要なイコライザーを作ろうと思うと、真空管であればたった2本で構成する事が出来ますが、半導体(トランジスター等)では多くの素子を使わなければ同等の性能は得られません。
 このことから、音楽信号が通過する素子数が少ないため、真空管には音の鮮度が損なわれにくいという利点があります。
 A-10SG TUBE ではアンバランス信号をバランス信号に変換する部分に真空管を使っていますが、たった1本でこの段を構成する事が出来ました。対して、前回のA-10SGではこの部分をOPアンプ2個で構成していますがOPアンプの内部には多くの半導体素子が封入されているため、信号の鮮度を問題にすれば真空管に軍配が上がるかもしれません。


音楽を聴くのに重要になるアンプの役割

 大まかに言えばアンプには入力された音楽信号を切り換えコントロールしスピーカーを駆動するという役割があります。
 この中でスピーカーを鳴らすパワーアンプ部について言えば、アンプ内部のDC電源を音楽信号でコントロールしてスピーカーに加える役割を担っています。タンクに貯めた水(アンプ内部の直流電源)を蛇口の開閉によって(音楽信号でコントロールして)必要な分をスピーカーに出力しています。
 このタンクの水に濁りがあったり、蛇口操作が音楽信号に対して遅れてしまったりするとスピーカーに理想的な電流を流し込めないことになってしまいます。
 また、スピーカーは音楽信号で駆動するとその抵抗値が常に変化しています。6Ωのスピーカーでも時として2Ωなったりするのです。その時は一時的に大きな駆動電流が必要になりますが、その電流がアンプから供給できない瞬間があるといわゆる「腰砕け」な音になってしまいます。
 そのため、パワーアンプにはスピーカーインピーダンスが変化しても同じ電圧が出力できる能力が求められます。

 

真空管と半導体の良いとこどりのハイブリットアンプ

 アンプは回路構成の違いから、真空管アンプ、半導体アナログアンプ、これらを組み合わせたハイブリッドアンプ、デジタルアンプに区分することができます。
 A-10SGは半導体アナログアンプになります。A-10SG TUBEはハイブリッドアンプになります。
 デジタルアンプは音楽信号を0と1のデジタル信号に変換して、そのパルス信号を増幅します。しかしながらスピーカーはアナログ信号で働きますのでアンプの出力段にアナログ音楽信号だけを取り出すフィルターを入れなければスピーカーをドライブする事が出来ません。利点は非常に高効率で発熱が少ない、回路構成が小さくできるといった利点があります。欠点は音楽を再生するうえで不要なスイッチングノイズが発生してしまうことです。
 ハイブリッドの良さは真空管・半導体それぞれ良いところを組み合わせて構成できる事です。A-10SG TUBEでは赤色と白色のケーブルで入力された音楽信号(アンバランス信号)をアンプを駆動するためのバランス信号に変換する部分を真空管で構成しています。真空管ではこの部分を1本で構成できますが、ここを半導体で構成しようとすると非常に多くの素子を投入する必要があり、それだけ、音楽信号が通過する素子数が多くなります。その結果、音の鮮度が損なわれる恐れがあります。
 一方、パワーアンプ部を真空管で構成するとどうしても出力トランスを積まなくてはなりません。この出力トランスの性能で真空管パワーアンプの音は決まるといっても過言ではありませんが、高性能の出力トランスは重く大きく非常に高価です。
 しかし、この部分を半導体で構成すると出力トランスが不要になり高性能なものが安価でしかもコンパクトに実現できます。

 


こだわる方には外付けリザーブ電源ユニットも

  ▲Conclusion PS-12VR (PS-14VRも出力電圧の違いだけで外観は同じです)

 A-10SG TUBEはDC12V 3AのACアダプタが3つ付属していますが、このACアダプタをリザーブ電源PS-12VRまたはPS-14VRにに変えることで音質をグレードアップすることができます。
 NECのA-10と同じ電源回路の構成となるこのリザーブ電源はオーディオ用電源として優れた性能を提供します。PS-12VRとPS-14VRの違いは出力電圧です。前者は12V、後者は14Vで、本機のLチャンネル、Rチャンネル用電源には12Vと14Vが、真空管ドライブ用電源としては12Vがご利用頂けます。
 Lチャンネル、Rチャンネル用電源に14Vバージョンのリザーブ電源を用いるとより力強い音を奏でますが、12Vのほうが他社のオーディオ機器にも使用できる可能性があるため、汎用性があります。DC12V 3Aの電源で動作するオーディオ機器をお持ちの方はPS-12VRをお薦めします。
 なお、真空管ドライブ用電源にはPS-12VRがお使い頂けますが、標準のACアダプタでも十分に性能を発揮します。電源の交換を検討される際はLチャンネル、Rチャンネル用の電源の交換からご検討ください。

  ▲A-10SG TUBEとPS-12VRを並べた図 (高さ、奥行き共に同じデザインになります)

 


A-10SG TUBEと併用できるオリジナルスピーカー C-SP615

  ▲Conclusion C-SP615(試作品・実際にはダクト下部にブランドプレートが入ります)

 今回、A-10SG TUBEでぜひ鳴らして頂きたい、A-10SG TUBEと平行して開発したスピーカーを用意致しました。高級家具にも使われる18mmのフィンランドバーチ合板を国内で加工し、ユニットはA&C Audioに製作を依頼したオリジナル品。
A-10SG TUBEにおいてもC-SP615においても開発を行う上で、それぞれをリファレンスとして音決めをしていきましたので相性はバッチリです。もちろん、お手持ちのアンプを鳴らす用途でもご利用頂けます。

  ▲C-SP615のスピーカーターミナル(大きく使い易いツマミで極太のケーブルも使用できます)


ES9038PROを搭載したDACもリリース予定  

A-10SG TUBEと同じデザインの筐体に収まったD/Aコンバーター(DAC)を現在、開発中です。DACがあればパソコンの音楽やデジタル音声出力を備えるオーディオ機器の音声をA-10SG TUBEで楽しむことができます。
ハイグレード品としてES9038PROを搭載したモデルとお求めやすい価格を目指したWM8741を搭載したモデルの2機種のラインナップを予定しています。
 開発が完了しましたらこのページでご案内致します。

  ▲ES9038PRO DACの試作中です

 

ちょっと聴いて!A-10SG TUBE試聴レポート

 画面上では音が伝わらない! でも、少しでもリアルな使用感を伝えたい。
 そこで!各界で活躍する方々にA-10SGを聴いた率直な感想をレポートして頂きます。 

▶オーディオ評論家 鈴木裕がA-10SG TUBEを徹底試聴!!

~ミドルクラスにして高いハイファイ性能のアンプとスピーカー~

 趣味のオーディオとしてはミドルクラスがもっと盛り上がるべきと日頃から思っている。そんな状況の中、港北ネットワークサービスというダークホース的メーカーから、かなり面白いモデルが登場した。コンクルージョン・ブランドのプリメインアンプA-10SG TUBEとスピーカーのC-SP615だ。

 それぞれの情報やら開発者の詳しいインタビューなどはどこかに載っているだろうからそれを読んでもらうとして、A-10SG TUBE の良さは、オーディオ的にいろいろ遊べつつ、その音の到達点がやたら高い点にある。もともとはNECのA-10をルーツに持っているアンプだが、ベーシックなセットに同梱されている3つのACアダプターだと値段なりの音質ではある。と、何気なく書いてしまっているが、プリ部用と左右のパワーアンプ用の3つの電源部がそもそも必要なアンプで、驚くべきことにコンセント口も3つ必要である。
世の中、普通じゃないアンプもいろいろあって、たとえばファンダメンタルのPA-10はプリメインアンプなのに2筐体で、本体はまだ6.6kgだが電源部は11.2kgもある。エソテリックのプリのフラッグシップ、Grandioso C1Xは本体と電源部という2筐体だが、電源部には2本の電源ケーブルが差さる形で、この異形さがかなり気持ちいい。あるいはパスラボのプリアンプも、最初は1ボディだったのがXP-32ではついに3ボディになってしまって、操作のノブなどのついているボディが実は電源部で、あとは左右のアンプ部に分ける、という構成。このやり切った感が半端ない。
分ければいいのかと言われればたしかにノイズをリジェクトしやすいし、電源部を強力なものに出来るし、大電流のパワートランジスタやトランスによる電磁波の影響からも逃れやすい。そういった要素をボディを分けることよってなくしていく設計思想。A-10SG TUBEも同じくだろう。3筐体でコンセント口も3つ必要という構成。たしかにエレクトロニクスとしての優位性もあるのだが、実際触って設置してみるとそのマニアックさが楽しい。

 しかし問題は値段だ。ボディを分けると物量がいるのでとうぜんいろいろコストが嵩んでくる。エソテリック350万円、パスラボ230万円、ファンダメンタル120万円という価格帯になってくるのも仕方ない(いずれも外税。念のためにこれらの3つのアンプともにちゃんと聴いているが、相当に音の印象のいい、好きなアンプたちだ)。それに対してA-10SG TUBEに別体リザーブ電源PS-14VRを2つ購入して組み合わせても、おおよそ20万円強。早割システムがあるので購入する時期によっても若干値段は変わってくるが、いずれにしてもミドルクラス充実すべし、と考えている筆者が推薦する所以である。

 その音について述べる前にリザーブ電源の電圧について書いておきたい。
 PS-12VRとPS-14VRの2種類がある。PS-12VRは直流12Vを、PS-14VRは14Vを出力する。メーカーとしてはどちらにしてもいいような曖昧な書き方をしている。両方を使って聴いたが、本来の設計電圧であるPS-14VRの方がハイファイ性能は明らかに高かった。12Vのにしておけば他の何かの用途にも流用できるかもしれないが、ここはそんなケチ臭いことは言わずにズバッと14Vの方を購入することを強くお薦めする。人生自体そうだが、音で妥協していいことなんか何ひとつない。

 さて、その状態、A-10SG TUBE+PS-14VR(×2)の音だ。純正組み合わせであるC-SP615を鳴らしたが、実に音楽が良く鳴る、まっとうな音だ。高域はきっちり立っていて、たとえばシンバルの強打とかギロのようなきわめて速いトランジェントの音も再現できるが、一方、しなやかで漂うような成分や、なめらかな感じもきちんと表現してくる。
 駆動力がしっかりあるので、左右のスピーカーのセンターの密度が薄くならないし、そもそもスピーカーからの音離れがいい。ちなみに「スピーカーからの音離れがいい」と言った場合、コンプレッションドライバー+ホーンのシステムのような反応のいい感じ、スパンッと音が立ち上がってくる速さのことを言う場合と、スピーカーから音が出ている感じのない、サウンドステージや音像がスピーカーの存在を無視したかのように見えてくる感じのふたつの別の意味を持っているが、その後者である。
 また、音の純度についても特筆しておきたい。どこかに色褪せた感じとかムラがなく、音像の実体感が高い。ジュースで言えば、水で薄めていない濃さで旨みがある感じ(そもそも果汁100%しかジュースとは言えないのだが)。あとは、昨今問題になっている各種の高周波のノイズの悪い影響による高域の雑味のある感じがしなかった。これも興味深い。A-10SG TUBE自体に「スーパークリーン電源回路」という、一種のクリーン電源部が搭載されているからからもしれない。

スピーカー、C-SP615について
  ハイエンド・オーディオの方向性を目指したスピーカーだ。
  と、あえていきなり書き出したが、「ハイエンド・オーディオ」は誤解されることの多い言葉だ。高級で高価なオーディオのことではなく、音楽と対峙できる至高のオーディオの意味。もともとはアメリカのオーディオ雑誌『アブソリュート・サウンド』の創設者であるハリー・ピアソンの概念で、最高度のサウンドステージを持ち、音像の実体感が高く、音色的なアキュレートさもきわめて高い再生のオーディオ、という意味。そういう再生の仕方をするスピーカーだ。
 ただし、世の中のハイエンド・オーディオの製品と比べると2ケタくらい値段が安い。最初にはっきり書くがそのための弱点が2つある。ひとつは大音量再生に向かないこと。ふたつめは低域のレンジが限られること。しかし、このふたつ以外の要素についてはその領域に達している。
  その世界で求められる大事な要素は、ドライバーユニットの振動板もエンクロージャーもかなりの剛性を持った造りで、たとえば分割振動を起こしたり、いわゆる箱が呼吸するような動きをしないこと。そのために特にドライバーユニットはユニークな設計で、その振動板はヴォイスコイルの動きに対してリニアに振動させるための立体的な構造を持っている。付帯音感じさせず、きわめて位相性能の高いトランスデューサーである。
低域のレンジは50Hz台くらいまで良く出ている。F特的には中高域が素直で、人の声やアコースティック・ギターなどを上手に聴かせてくれた。コクとか艶ではなく、リアルな音色感で、生々しく聴かせる方向のスピーカーだ。
  中でも興味深かったのは、聞き慣れた音源からの音像。これがふだんよりも上方に定位するし、たとえばクラシックのオーケストラのソフトでの、天井方向に響きが飛んでいく感じがいいのは当然として、ホールの天井の形自体を表現できているような、そんな伸びやかな空間表現力をもっていたことだ。これが歪みのない振動板による、忠実度のきわめて高い再生なのだという説得力があった。

  趣味性の高い、いじれるオーディオを探している方に薦めたいアンプとスピーカー。そういったものをこの価格帯で購入できるのもありがたい。

鈴木裕(すずき ゆたか)

1960年東京生まれ。法政大学文学部哲学科卒業。オーディオ評論家、ライター、ラジオディレクター。ラジオのディレクターとして2000組以上のミュージシャンゲストを迎え、レコーディングディレクターの経験も持つ。2010年7月リットーミュージックより『iPodではじめる快感オーディオ術 CDを超えた再生クォリティを楽しもう』上梓。(連載誌)月刊『レコード芸術』、月刊『ステレオ』音楽之友社、季刊『オーディオ・アクセサリー』、他。文教大学情報学部広報学科「番組制作Ⅱ」非常勤講師(2011年度前期)。『オートサウンドウェブ』グランプリ選考委員。音元出版銘機賞選考委員、音楽之友社『ステレオ』ベストバイコンポ選考委員、ヨーロピアンサウンド・カーオーディオコンテスト審査員。(2014年5月現在)。

 

 

 

 

 


▶スピーカーユニット開発者 島津知久に聞く、
        A-10SG TUBEと C-SP615

 アンプを作ったからにはやっぱり、ちゃんとしたスピーカーで聴いて欲しい。そんな思いからA-10SG TUBEの相方となるスピーカーの検討を始める際に、白羽の矢を立てたのはA&Cオーディオの島津氏。島津さんには今回、C-SP615に搭載するユニットの供給を頂きました。アンプもスピーカーも開発中に何度も来社頂き、検討や協議を重ねてきましたが、2020年9月某日、島津氏に初めて最終形のA-10SG TUBEとC-SP615を試聴頂き、港北ネットワークサービスの野辺が感想を伺いました。

野辺)スピーカーユニットを開発するに至った経緯について教えてください
島津)スピーカーユニットの製作を始めたきっかけは、独自の音作りのためには、キャビネット等の周辺技術での音作りでは満足出来なくなり、スピーカーユニットそのものの音作りが必要であると感じたためです。実際に振動板の開発を行ってみると、現実のスピーカーの振動板は、正に楽器の響板の様な複雑な動作をしており、本来の正確・忠実な音響変換装置としてはまともに機能していないという事実を再認識しました。アンプやプレーヤの物理性能が著しく向上したオーディオ装置の中で、スピーカーは石器時代の装置のままであると言っても過言ではないと考えるに至りました。そして、使用帯域内で完全なピストン運動をする“超硬振動板”の完成を目指して日夜邁進しております。

野辺)今回のC-SP615に搭載したユニットの特徴を教えてください
島津)スピーカーというものは、あたかも楽器の様に扱うのが常識になっているかと思います。超硬振動板による高忠実度再生とか、正確な音響変換という言葉には、温かみや味のない音質を連想される方が多いかも知れません。この事は、従来のスピーカーがあまりにも“不忠実”なために、否応なしに付帯してしまう共振音を利用して、あたかも楽器の様に音を付け加える事で、音を演出して胡麻化している事の裏返しであると思います。しかし本物の原音忠実再生を実現する事は、アーティストの演奏の表情や音の豊かさをそのまま再現する事を意味します。本来は、録音音源には十分に豊かな音の情報が入っているのであり、スピーカーでの余計な演出などは無用なはずなのです。
 この度C-SP615に採用していただいたF60A2G型6cm超硬振動板スピーカーユニットは、大音量再生は行わない前提で、 “超高忠実な音響変換器”をリーズナブルに提供するものです。従来の小型スピーカー特有のチープな音を心配する必要はありません。録音音源本来の豊かな音楽をお楽しみいただければと存じます。

野辺)試聴頂いたC-SP615についてどのような印象を持たれましたか?
島津)従来のスピーカーシステムでは、付帯音を意図的に利用した音作りが常識的に行われています。しかし、貴社におかれては、超硬振動板ユニットの特徴を良くご理解下さり、付帯音を排除したしっかりしたキャビネットと適切な内部吸音処理を施して下さいました。非常にナチュラルでありながら、演奏の微妙かつ豊かな表情や、極めてリアルなステージ感の再生を実現していると思います。低音域のバランスも良く、通常は小型スピーカーが苦手とするスタンド上設置でも厚みのある音で愉しめます。

野辺)A-10SG TUBEで鳴らすC-SP615についてはいかがですか?
島津)チーフエンジニアの萩原氏も感心しておられましたが、このスピーカーは本格のハイエンドアンプの音決めにも問題なく使用できる実力があります。この様な環境で、時間をかけて十分に煮詰められた良質なアンプであり、単に高忠実度であるだけではなく、表現力に優れていると思います。例えば、しばしば気持ち悪い声に聞こえてしまうので好みの分かれるチェット・ベイカー独特のヴォーカルですが、ここでは血の通った艶めかしさまで再現してくれます。好み論をはねつける説得力があるのではないでしょうか。最近のハイレゾ録音の方が、この様な古い録音よりも良い音だと思っておられる方が多いかも知れませんが、本当に良質な再生系では、演奏の良さは勿論、余計な加工を施していない古い録音の情報量の多さにも驚くことになると思います。また、低能率スピーカーとの組み合わせという事で、応答感の鈍い音が想像されがちですが、デイヴ・グルーシンなどアタック音満載の音作りもご機嫌なスピード感で聴けます。それから、再生の難しいフルオーケストラでは、通常は音が混濁してしまいますが、ここでは澄み渡った豊かな音場感と共にリッチな音の醍醐味を味わうことが出来ます。弦楽のフォルテもリッチでヒリつくことはありません。

野辺)お客様のお持ちのアンプでC-SP615を使用する際の留意点や相性みたいなものはありますか?
島津)この事は最も心配な点です。癖の無いスピーカーですので、原則的に相性問題は生じない、と申し上げたいところです。しかし、濁りや付帯音が非常に少なく、且つ解像度も高いスピーカーですので、従来のスピーカーでは気が付かなかった再生系の問題点が露呈してしまう可能性があります。音がボソボソするとか、細くて潤い感の無い音になる、といった事が典型的な問題症状です。悪く思わないで頂きたいのですが、この場合は再生系に問題があります。安いアンプは駄目であるという事では決してありませんが、世間の常識や評判で探しても良品は簡単には見つけられないと思います。ここで各社ブランドの再生系についてコメントをする訳にはいきませんが、有名ブランドの高額品でさえお勧めできない物があります。遠回りをしたくないとお考えであれば、A-10SG TUBEを併せて導入していただくのも賢明な選択肢の一つだと思います。

野辺)ユニット開発者として指摘したい、C-SP615の使いこなしのポイントみたいなことはありますか?

島津)大音量再生を前提とした設置形態は当然ながらお勧めしません。例えばスピーカー間を1.5m、聴取場所まで1.5m程度とした、いわゆるニアフィールド設置をお勧めします。音像定位や音場感を重視する場合は、極力壁から離れた場所を使用する、若しくは吸音・拡散ボードを併用すると良いです。良質な再生系を使用すればソースも選びませんし、古い録音の良さまで引き出してくれます。音楽経験の多い方では、最近のマルチマイク録音の上手い下手まで克明に聴きとれる事に気が付かれると思います。このスピーカーの能力は再生系次第で青天井であると言っても良いと思います。くれぐれも良質な再生系と組み合わせて頂く事を推奨します。また、音質改善アクセサリーにつきましては疑義のあるものが多々存在します。必ずご自身で音をご確認ください。音の変化が良く分かるスピーカーですので、疑問の生じた場合は、たとえ高価なものであったとしても撤去する事をためらわないで下さい。

 

野辺)最後にC-SP615の購入を検討される方へメッセージがありましたらお願いします
島津)日本の高度経済成長後にバブル経済が倒壊し、製品の価格破壊が起こり、薄利多売となり、廉価な中国製品に頼りきりとなり、そして国内メーカーが絶滅危惧種となりました。しかし今日のコロナ禍の中で、地産地消の良さが見直される時代になってきました。こだわりの良品との出会いのためには地産地消に大きな意味があるのではないでしょうか。貴社も、我がA&Cオーディオ社も日本国内の横浜市という身近な地域で活動するこだわりの小規模メーカーです。私のお会いしたチーフエンジニアの萩原氏は、マニアくずれの石頭技術者ではなく、実直で丁寧な仕事をされる“良き職人さん”でした。そしてこのたびはA&Cオーディオ社の新しい技術である超硬振動板スピーカーにご注目いただき、その潜在能力を引き出す良い仕事をして下さいました。私たちは“こだわりの職人集団”であります。良品との出会いはきっとここにあると思います。これを機会に良い音楽を愉しんでいただけましたら幸いです。

野辺)ありがとうございました
 


▶オーディオブロガーがネット配信との相性をチェック!

オーディオブログが編集者の目にとまり、オーディオ雑誌でも記事を執筆しているX氏。A-10SGもお買い求め頂いていたことから、今回、レビューをお願いしたところ、コロナ禍の影響で最近増えているネット配信を試聴した場合のレポートを頂きました。なお、ご本人の希望でご本人やそのブログが特定されるような情報は伏せてお送り致します。

配信動画を真空管サウンドで聴いてみました。

A-10SG TUBEのしっかりした作り、音質はすでに先生方や専門誌での紹介でおわかりになるところと思います。ですので、今回は、急拡大している、ネット配信での音楽リスニングでA-10SG TUBEを使ってみたいと思います。

まず、おさらいですがA-10SG TUBEは真空管と半導体のハイブリッドアンプです。わたしの自宅のメインシステムで鳴らすと、左右独立電源かつローインピーダンスのパワーアンプ部がしっかりした音場再現を行うことに加え、ドライバー段の真空管が、程よく音色、広がりを聴かせてくれます。スピーカーを駆動するパワーアンプ段の仕上がりが、真空管の良さを十二分に引き出してくれていることを感じました。

そのハイブリッドアンプで、配信動画を見てみます。観るのは、某有名バイオリニストの、ものすごく派手なライブです。どう派手かというと、ご本人のアグレッシブな演奏に加え、ピアノ、パーカッション、ベース、エレキ、さらにはシンセサイザーまで投入されていて、とっても熱く濃いのです。ちなみに、音質がどうなのかはわかりませんが、公式動画であることもあって十分と思います。それをTVからDACへ光ケーブルでつなぎ、DACからA-10SG TUBEにつないで鳴らします。もちろん、オーディオアンプですのでリニアPCMで2チャンネルステレオです。

さて、その結果は…。
特筆すべきはノリの良さです。真空管の持つ響き、膨らみの感じが、楽器の音像を程よく大きくしてくれます。試聴したライブはマイクや機材からラインでコンソールに引いているようで、定位、ボリューム感など、しっかりとマスタリングされているのですが、それが故にスタジオレコーディングのように、楽器が画面の一点に定位してしまう傾向がありました。そうなると、ライブなどは、画面とのズレが気になってきたりしますが、A-10SG TUBEでは、程よく広がるステージ感にそういったことが緩和されます。さらに、ライブ感も、ステージの大きさが広がることによって増してきます。
旧作のA-10SGも使ってみましたが、こちらはモニターにも使えるようなしっかりとした定位感で、半導体アンプの良さを最大限に生かしているためか、ライブでは少々堅苦しくなる感じです。このことからも、A-10SG TUBEに採用された真空管の回路が、個性的な、いい仕事をしていることがわかります。そして、搭載されたJJ製真空管の味わいと思うのですが、ボーカルにノリがあることに加え、弦楽器はアコースティックもエレクトリックもバッチリ聞かせてくれます。実は、映画も観ましたが、聞きやすく、押し出し感のある音は、ある意味万能かもしれません。

それなら、生粋の真空管アンプでもいいんじゃない?となりますよね。ここは正直、好き好きですが、試聴したような、アコースティックの要素と電子楽器の要素、クラシックとロックの入り交じったようなソースの場合には、腰の強い再生音という点でハイブリッドアンプは有効と思いました。また、A-10SG TUBEの利点として、しっかりとした内容なのに小型で設置性がいいこと、硬派なブラックフェイスで近頃のディスプレイの傾向にマッチすること、加えて言うなら、少々部屋を暗くして試聴するときに、ロゴと真空管ののぞき見えるイルミネーションに心ときめくこと、でしょうか。(好き好きとは思いますが)

試聴のまとめですが、このA-10SG TUBEは、映像ソースと組み合わせて使う場合において、
・すでに2CHのシステムを持っていて、少し音に物足りなさを感じている方
・テレビ内蔵のスピーカーからステップアップしたい方
・AVアンプは持っているけれど、ピュアオーディオも追加してみたい方
などなど、多くの方に朗報かもしれません。さらに、同じデザインのDACも追加で発売になるという話ですので、モニターまわりを硬派に決めたい人にも良い選択なのではないでしょうか。


 

製品仕様

 

●A-10SG TUBE(アンプ)の仕様

出力(EIAJ)  15W+15W  at4Ω (DC12V3A ACアダプターor PS-12VR 電源接続時)
 21W+21W  at4Ω (DC14V3A ACアダプターor PS-14VR 電源接続時)
入力感度  230mV  (15W at4Ω)
 270mV  (21W at4Ω)
信号入力端子  RCA A&B 2系統 (ブラス削り出し金メッキ)
スピーカー出力端子  スクリュー式 1系統 (非磁性構成金メッキ・バナナ対応)
L&Rch用 DC入力端子

 2.1mm標準DCジャック 10A対応ジャック ※1

Tube用 DC入力端子  2.1mm標準DCジャック 10A対応ジャック ※2
寸法  (幅)250mm ×(高さ)96mm(脚含む)×(奥行)263mm(突起部含まず)
質量  6kg
添付品  DC12V 3A アダプタ × 3個

※1:
L&Rチャンネルには標準添付のDC12V 3A ACアダプターまたは別売
PS-12VR(DC12V3Aリザーブ電源)を接続してください。    
DC14V3AのACアダプターまたは別売PS-14VR(DC14V3Aリザーブ電源)
を接続しますと21W/ch at4Ωにパワーアップが可能です。

 
※2:
Tube用 DC入力端子は添付の12V3A ACアダプターを接続してください。
PS-12VRも接続可能です。
Tube用DC入力端子にDC14V は入力しないでください。(12V専用です)

 

●C-SP615(スピーカー)の仕様

方式

 フローティングマウントユニット搭載バスレフBOX

ユニット

 6Cmフルレンジ(超硬振動板+デッドマス)

再生帯域

 55Hz~15kHz

能率

 80dB/2.83Vm

インピーダンス

 4Ω

耐入力

 15W (RMS)

入力端子

 非磁性金メッキスクリュー方式(バナナプラグ対応)

キャビネット

 フィンランドバーチ合板

外形寸法

 (幅)160mm×(高さ)295mm×(奥行)170mm

質量

 3.1kg/1台

 

●PS-12/14VRの仕様

出力電圧/電流

PS-12VR:DC12V/3A , PS-14VR:14V/3A

入力

 AC100V 50/60Hz (インレットコネクタ)

本体寸法

 (幅)120mm × (高さ)96mm × (奥行)270mm

出力端子形状

 Φ2.1 × 5.5mm (L寸9.5mm) オスプラグ (ケーブル長は50cm)

質量

 3.6kg


製品カタログのご用意もございます。
こちらからご覧ください。


プロジェクトメンバー紹介

●萩原 由久(YOSHIHISA HAGIWARA)

港北ネットワークサービス株式会社所属、チーフエンジニア。マランツでアンプの開発に携わった後、NECに移籍。銘機A-10の開発チームのひとりとしてリザーブ電源等を作る。その後も歴代A-10シリーズの開発、オーセンティックでのA-10X、A-10XXシリーズまで、すべてのA-10の開発に携わった。またA-10Ⅱ(A-7、A-11)で開発したリザーブⅡ電源は、現在在籍する港北ネットワークサービスでPS-12VRとして商品化している。

 

●野辺 浩史(HIROFUMI NOBE)

国士舘大学大学院(経営情報論専攻)修了後、2008年に港北ネットワークサービス株式会社を設立、代表取締役就任。1983年生まれ。2009年にTOKYO FMコミュニケーションズグループ『ミュージックバード』の特約店となり、ミュージックバードチューナーの開発を始める。自社ブランド「Conclusion」を立ち上げ、ミュージックバードチューナーのハイエンド機種を中心に展開中。

 

●島津 知久(TOMOHISA SHIMAZU)

大学で物理学を専攻後、ハイテク産業機器の開発技術者として従事。その後、楽器の輸入販売業、大型電子オルガンの開発・製造・販売等に従事。2012年に独立、A&Cオーディオ社を設立。今回のプロジェクトではC-SP615に使用しているスピーカーユニットF60A2Gを開発、製造を担当している。

PERSONAL RECOMMEND あなたへのおすすめプロジェクト