昨年12月に発行した雑誌「ステレオ時代」Vol.8の付録、『A-10SG』(A-10のエッセンスを盛り込んだアンプ基板)に『A-10』の特徴だったMGC(メカニカル・グランド・コンストラクション)思想を盛り込んだ専用ケースに基板を収めた『A-10SG complete』を今回先行販売します。
雑誌『ステレオ時代』の編集長、澤村信と申します。
『ステレオ時代』とは、1970〜90年代の国産オーディオを手軽に楽しむためのムックシリーズで、これまでに9冊刊行しております。その記念すべき創刊号(2013年12月発売)の巻頭特集で取り上げたのが往年の銘機(私にとっての永遠の憧れである)NECのA-10シリーズでした。
1983年に発売された初代NECA-10は、それまで家電メーカーのイメージが強かったNECがオーディオマニアに強く認知されるきっかけとなった銘機です。
1982年に世界初のCD(コンパクトディスク)が誕生し、オーディオ業界は活況を呈しました。そのため老舗オーディオメーカーだけでなく、家電メーカーもオーディオに力を入れ始めました。なかでもNECは、もともと持っていたデジタル技術や通信技術を活用するだけでなく、サンスイやマランツといった名門ブランドから多くの技術者を迎え入れ、オーディオ機器の開発に本腰を入れました。
そのため初代『A-10』はNECとして初めてのハイファイ・アンプですが、また10万円を切る、中級でも安い部類に入る価格帯でありながら音の質感、スピード感ともクラスをはるかに超えた性能と評価され、人気モデルとなります。もっとも実際にはコスト度外視の開発がされ、作れば作るほど赤字がかさんだと言われるほどの中身の濃さでした。
特にアンプの命といわれる電源は、『理想の電源』と言われるバッテリーのようなキレイな電源を交流100Vから作り出す『リザーブ電源』と名付けられた機構が新たに開発され組み込まれています。
一般的なアンプの電源部は負荷がかかると断続的に鋭いピーク電流が流れ、音楽信号が乱されます。しかしリザーブ電源はその名称の通り、1回蓄えた電気を流し込むことにより、ピークを小さくし、音への影響を大幅に抑えることができるのです。多くのオーディオマニアをうならせた伝説のサウンドは、このリザーブ電源によるところがとても大きいのです。
もちろんA-10には、リザーブ電源のほかにもNECの生え抜きの技術者に加え、サンスイやマランツから移籍してきた技術者たちによって、多くのイノベーションとノウハウが注ぎ込まれています。このA-10は、初代、『A-10Ⅱ』、『A-10 TYPEⅢ』『A-10 TYPEⅣ』『A-10X』と続き、NECの社内ベンチャーとして立ち上げたオーセンティック(AUTHENTIC)ブランドで『A-10XX』とその派生モデル『A-10XX Basic』を最後に幕を下ろしました。こうしてA-10は多くのオーディオマニアたちの憧れとなり、伝説的な銘機として語り継がれています。
私にとってA-10は、ずっと憧れ続けている、まるで初恋の人のような存在です。
『ステレオ時代』の創刊号でも特集を組むほど思い入れがあり、その際、A-10のアンプ設計を担当された方々にお会いする機会を得ました。
なかでも萩原由久氏は、初代から1994年に発売されたA-10XXまで、歴代のA-10の開発に中心メンバーとして携わった方。お話を伺ったところ、現在萩原氏が在籍されている港北ネットワークサービス(株)で、A-10の核ともいえる電源システム『リザーブ電源』を使った電源ユニットを開発販売されているということを知ったんです。
当時の熱い思いが募ってきました。『もう一度、萩原氏にA-10を作っていただけないだろうか・・』という考えが湧いてきました。
思いが高まり、昨年12月に発行したVol.8にて、萩原由久氏の設計によるA-10のDNAを受け継ぐアンプ基板『A-10SG』を付録にすることを企画しました。
本来、雑誌に付録を付ける理由の最大のものは『本をより多く売るため』だと思います。つまり誰もが欲しくなってしまうものを付けるのが大切です。そういう意味でこの付録は、まったく当てはまりません。実際、この付録を付けることで『たくさん売れるだろう』などとは考えていませんでした。その証拠(?)に製作部数は今までとほとんど同じです。
ではなぜ付録を付けたのか。
それは「自分の初恋の想いをここで成就させたい・・」と思ったからです。(すみません)
もちろん雑誌の付録ということで制約は多かったのですが、実際に設計していただいた基板でアンプを組み立ててみると、その音は期待以上のものでした。
市販のACアダプターを使用しても、1〜3万円程度のデジタルアンプにはけっして負けない、キレの良さとパンチがある力強い音、さらに港北ネットワークサービスで販売されているリザーブ電源ユニットを使用すると、そのうえ音の細かさと艶が乗る、素晴らしいものでした。
ですが萩原氏曰く「本当はA-10の特徴であるMGC(メカニカル・グランド・コンストラクション)を使った筐体に収めてこそ実力を発揮するのですが」とのこと。
私自身「基板単体でここまで素晴らしい音なのに、萩原氏の考える筐体を作って完成させたら、いったいどんな素晴らしい音になるのか聴いてみたい・・」と思いました。そしてそれは、この基板の実現に関わったメンバーの思いになりました。
本来は、万全の開発体制と豊富な予算で萩原氏にA-10思想を詰め込んだ理想のアンプを作っていただきたいのですが、予算が限られている上に先行投資をするということは極めてリスクの高いものになってしまいます。
「ステレオ時代」創刊時からの思いは、「本来オーディオはもっと手軽に楽しめる趣味であるべき」と根底にありますので、限られた数量の機器を数百万円という非常に高い価格で提供する現在のハイエンドオーディオのようなものにはしたくありません。
雑誌の付録として基板のみを付けたのは、自分で作ることで安く抑えることてができる、また部品等のセレクトで求める音質とコストをコントロールできるようにした、という目論見がありました。そこで、ユーザーには最低限のコスト負担で、萩原氏の あるいはオリジナルのA-10の思想を反映できる方法として、クラウドファンディングを使うことにしました。
マランツでアンプの開発に携わった後、NECに移籍。銘機A-10の開発チームのひとりとしてリザーブ電源等を作る。その後も歴代A-10シリーズの開発、オーセンティックでのA-10X、A-10XXシリーズまで、すべてのA-10の開発に携わった。またA-10Ⅱ(A-7、A-11)で開発したリザーブⅡ電源は、現在在籍する港北ネットワークサービスでPS-12VRとして商品化している。
<コメント>
A-10SGは澤村編集長からのご提案がなければ実現しなかった奇跡のアンプです。
10W+10W(at6Ω)と小出力ながらA-10 の香りを楽しんでいただけるアンプに仕上がったと自負しております。澤村編集長の無理難題(失礼!)を実現すべく、もがき苦しみましたが“瓢箪から駒”の結果となりました。
パワーに比べ異様とも思える巨大なヒートシンクを配し、大電流が流れるパワーICをそこにしっかりと固定し、メカニカルなグランドと電気信号のグランドを巨大ヒートシンクに担わせました。
12V電源で必要十分なパワーを得るためパワー段はBTL動作です。保護回路が内蔵されたパワーICの利点を活かしICとスピーカーは直結されています。保護リレー接点を介さないため音質劣化も無いし、長期の信頼性も確保できます。このバランスタイプのパワーICを専用のバランス変換回路を介してドライブしています。また、左右独立アース、左右独立電源によりチャンネル間の干渉も極めて低く抑えています。いずれも歴代A-10のコンセプトを踏襲しています。
今回基板と別に開発した専用シャーシはA-10のコンセプトであったメカニカルグラウンド構造となっており、脚は3点接地のスパイクタイプです。その結果、電源を搭載しない小型アンプでありながら、4kg弱の重量級アンプとなってしまいました。しかし、これが揺るぎない再生音の秘密でもあるわけです。
外付けの電源はACアダプターでも充分なクオリティーを発揮いたしますが、PS-12VR(リザーブ電源方式12V3A安定化電源)を接続して頂ければA-10SGの真価が発揮されます。是非アナログアンプA-10SGの実力を体感してください!
港北ネットワークサービス株式会社
技術部
萩原由久
大手メーカーの開発サポートや研究を主な業務としてスタートした「港北ネットワークサービス」の創設社長。その後萩原氏との出会いをきっかけにオーディオ事業を始め、自社ブランド「Conclusion」でFMチューナーやミュージックバード専用チューナー、ヘッドホンアンプなどを開発、販売している。
<コメント>
2016年の6月に澤村編集長から相談を受け、開発が始まったA-10SGは、アナログアンプ基板を付録にするという業界としても初の試みだろうと思いましたが、当社としても雑誌付録基板を製作すること自体、初めての試みでした。
通常、付録企画として展開していくには部品やケースなどを安価に供給できないと多くの方に楽しんでもらうことができません。しかし、当社の場合は自社ブランドとして掲げる「Conclusion」(=結論の意)の言葉に表われているように、技術者のある意味プライドを懸けたもの作りをしています。コストや販売価格は常に意識しているものの、納得する音質とそれを実現するコストが天秤に乗るようなことがあれば、それは音質が選ばれます。
このような作り方しかできないために、やはりこのA-10SGもその道を辿るような作られ方をしてきました。部品、シャーシ、ヒートシンク、電源など一揃い購入頂ければ、価格は中級クラスのパワーアンプと変わらない金額になってきますが、その投資に十二分に見合うサウンドをご体感頂けるものとお約束致します。
港北ネットワークサービス株式会社
代表取締役社長
野辺浩史
もともと私の「A-10の音を聴きたい」という個人的な願いから生まれたこの企画ですが、周囲の方のアイデアやご尽力の賜物でステレオ時代の付録基板として実現しました。ただ開発していただいた萩原さんが「裸の基板では実力を発揮できない」「市販のACアダプターでは物足りない」とお考えになっていたことは傍からもひしひしと感じていました。
もちろんケースを自作する、あるいは自分のスタイルに合わせてモディファイする、というのが自分で組み立てる楽しみでもあるのですが、それとは別に、A-10SGの本当の実力を知っていただきたい、という願いも捨てきれないものでした。
このプロジェクトをきっかけに、ひとりでも多くの方に現段階で萩原さんが煮詰めた完成版A-10SGの音を聴いていただけたら、こんなに幸せなことはありません。
・「ステレオ時代」創刊号のA-10記事の抜き刷りプレゼント
・付録付きの「ステレオ時代」vol.8 本誌+萩原さんのメッセージカード
¥40,000(超早期割)先着5台限定
¥45,000(早期割)先着50台限定
¥49,800(スタンダード)
・A-10SG本体+ACアダプタ2個をセット
現状シャーシと比較してスパイク脚の改良有り
¥89,800(スタンダード)
・A-10SG本体+リザーブ電源をセット
現状シャーシと比較してスパイク脚の改良有り
¥114,000(超早期割)先着5台限定
¥120,000(早期割)先着30台限定
¥129,800(スタンダード)
・A-10SG本体+リザーブ電源2台をセット
現状シャーシと比較してスパイク脚の改良有り
¥169,800(早期割)先着5台限定
¥189,800(スタンダード)
・A-10SGのボリュームをより良いものに変更、回路基板を新設計、リザーブ電源の出力電圧を14V程度に昇圧、シャーシを銅メッキ、サブヒートシンクをアルミ平角棒から銅製に変更、シャーシに実装されているバランスウェイトを鉄製から銅製に変更
¥200,000(早期割)先着3台限定
¥248,000(スタンダード)先着5台限定
・Special Editionの仕様に加え、萩原さん自身が銀含有はんだを用いて実装(サイン有り)