写真家 所幸則 
娘とつくる新作【お散歩ジャンプ】
〜 ONE SECOND With KOTO 〜

うたかた堂出版・杉山武毅さんからのコメント



◆所さんとの出会い

所幸則さんとは、2013年の六甲山国際写真祭の初開催の際に、キュレーターの太田菜穂子さん監修のグループ展に出展いただいたのがきっかけで、その後もわざわざ神戸に来てくださったことから、お付き合いが始まりました。

所さんをご存知の方はわかると思いますが、彼はとにかく絵が描ける数少ない写真家の一人だと思います。絵というのは、つまるところどれくらい美学に沿う作品を作れるのか、ということなのですが、所さんのイメージへの執着はコマーシャル時代同様とても高く、作品を強く美しく仕上げます。One Secondシリーズから、その発展系で作られたアインシュタインロマンスなどの作品は、コンセプチュアルな「時空」というアートの装置を持ちつつ、子供のような風景への興味がその原動力にあるわけで、とてもわかりやすい作品に仕上がっています。

今回クラウドファンディングに企画された「お散歩ジャンプ」の作品は、同じくOne Secondの発展系ですが、今度はかなりパーソナルな切り口で制作されている美しい作品です。娘をOne Secondの中におき、自分と娘との関係性を、所さんにしては珍しく、かなり感情的に紡いでいくような作品なのです。

自分の命の長さと娘の未来の長さ、もはやジャンプのできなくなった大人としての主体と軽やかに空を舞う娘との対比に、少し「うっ」とくる作品です。今回のプロジェクトは、所さん自身がうたかた堂を出版社に指名してくださいました。軽やかに、けなげに空を舞う「ことちゃん」をどのように描くのか、大変楽しみなプロジェクトだと考えています。

杉山武毅(Gallery TANTO TEMPOディレクター・六甲山国際写真祭ディレクター)

 






うたかた堂出版 (正式名 UTAKATADO Publishing) 
設立年 2011年 
設立の経緯と活動の実際
2008年写真専門ギャラリーGallery TANTO TEMPOが神戸に設立され、当時の関西には珍しい企画展ギャラリーとして様々なプロジェクトを開催してきました。ギャラリーディレクターの杉山武毅は、写真文化と教育、マーケット形成に独特の理論をもち、海外のレビューイベントの審査員や、海外での写真展キュレーションの経験から、六甲山国際写真祭などを創設、ディレクターも務めています。2011年、安価で質の高い写真集を作る取り組みを始めるために、Gallery TANTO TEMPOの出版部門としてうたかた堂を設立しました。写真集出版は以前に比べると敷居が低くなったとはいえ、駆け出しの写真家にとってはまだまだ機会が訪れません。そのため、海外作家の企画写真集なども制作しつつ、年に数冊、デザイン編集費を大幅に抑制した写真集を出版しています。こういったグラスルーツ(草の根)の手法は、海外では写真集の自己制作(自分で編集デザイン、製本をする)に近く、若手が自分のポートフォリオを写真集として手にする自己表現の大切な手段といえます。うたかた堂は、これからも企画本や安価で質の高い写真集制作を続けていきたいと考えています。

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2016/07/23 15:57