image

【不完全燃焼の連載『祈りのかたち』を書籍化】視覚障がい者にも読める本「LOW VISION BOOK」を広めたい

安田松慶仏師の話 10月18日

私は東京で彫刻制作や彫刻文化財修復の仕事をしております白澤陽治と申します。

三輪途道さんは、私が通っていた東京造形大学と東京藝術大学大学院の先輩で、彫刻家として尊敬する方です。

三輪さんがご執筆された『祈りのかたち』は彫刻家の視点から魅力的な各地のお像を紹介する貴重な本となっております。その中で掲載されております、榛名神社随神像の作者と修復についてコメントさせていただきます。

〈彫刻師 安田松慶について〉
榛名神社随神像の台座には、制作した彫刻師 安田松慶の名が銘記されています。 彫刻師 安田松慶の初代は寛政4年(1792)、徳川将軍の招きにより江戸増上寺の仏師となり、その後苗字帯刀を許され江戸仏師処となりました。随神像は明治39年(1906)に奉納された記載があり、その年代から、制作は4世〜5世安田松慶の頃だと思われます。

〈随神像の修復にあたって〉
この度私は、大学院の恩師である籔内佐斗司先生の工房と協力して、榛名神社随神像の修復スタッフとして彫刻部の修復に携わらせていただくこととなりました。 お像と制作銘記のある台座は今月12日に随神門から搬出作業を終え、これから本格的な修復がはじまります。

お像は長い年月の間、門に安置されていたため、部材のいたみが進んでおり、早期の修復が急がれる状況でしたが、特に本体については本格的な解体修復を伴う状態であり、相応の作業スペースの確保が必要不可欠でした。 私は平成29年から仏像修復等の仕事で偶然にも安田松慶氏のご子孫が経営する安田松慶堂との関わりがありました。そこで氏が制作したお像修復のためのスペース確保について、安田松慶堂社長 安田元慶様にご相談したところ快く協力してくださり、彫刻部の修復を安田松慶堂施設で行うことになりました。

本修復にあたり、榛名神社宮司 佐藤眞一様をはじめ、多くの方々とのご縁によって随神像修復が実現したことは大変喜ばしく、このような機会に巡り会えたことをとてもありがたく存じます。これからの修復期間、完成にむけてスタッフ一同、精一杯がんばりたいと思います。

最後になりますが、『祈りのかたち』は修復前の随神像の記録としても貴重な本となっています。より多くの皆様にこの本を通して各地のお像の魅力が届くことを願っております。

白澤陽治 東京藝術大学大学院 保存修復彫刻研究室テクニカルインストラクター、合同会社藤白彫刻研究所 運営

2021/10/18 09:19