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【不完全燃焼の連載『祈りのかたち』を書籍化】視覚障がい者にも読める本「LOW VISION BOOK」を広めたい

お社長 10月8日

私には30年来の付き合いのお社長がいます。またの名をタコ社長とも呼んでいます。彫刻界の大勧進職です。又の名前を籔内佐斗司さんともいいます。

 知り合ったきっかけは、例のごとくの重源さんの模刻です。作品が仕上がらず、留年することにしたものの東京と東大寺を往復するお金がなく、アルバイトを探していた私に助手さんが、籔内さんの工房を紹介してくれました。すでに売れっ子になっていた籔内さんでしたので、世田谷経堂にアトリエを持ち、ベンツにも乗っていました。確かまだお社長は30代後半でした。今籔内佐斗司工房という名前に変わりましたが、当時は「ぶっしゅ」でした。仏手から引っ張った言葉だと思います。その工房の社長ですので、遊びココロも込めて私は「お社長」と呼んでいました。

 先月のブログで重源さんを彫るのに東大寺に迷惑をかけたことを書きましたが、迷惑はここでも引き起こしました。まず第一に芸大に行かなくなりました。芸大には、全く顔を出さず、ぶっしゅと東大寺の往復でした。芸大さん申し訳ありません。次に東京にいる間は、工房に住みつきました。昼間籔内さんの仕事をして夜に自分の作品を作っていました。留年した始めは模刻は東大寺で全てやっていたのですが、漆彩色は東京に持ち帰りぶっしゅで仕上げたのです。しかしまあ、いったい何人に手を借りたことでしょう。お社長のベンツに何度も重源さんを積んで運んだことか、、。お世話になりました。その10年後お社長は芸大の教授になりまして、今年の春無事に退官しました。気がつけば、30年という月日が流れていました。

 芸大の学生時代を含め、3年半アシスタントとして働いた所、日光の輪王寺の七福神の仕事が入って、結果的にそれがきっかけとなって、アシスタントは卒業しました。私の立場で失礼な表現をする無礼をお許しいただければ「くされ縁」という言葉がまさにぴったりなお方です。

 こちらから遠回りに発言しても真実だけむき出しにして球を投げてくれます。それも速攻です。私は自他ともに認めるせっかち小僧なので、仕事に夢中になると暴走してしまう欠点がありますが、それを全て超越したのがお社長です。それも理想論で語るのではなく、現実の落としどころを瞬時に見抜く力は天下一品です。今回のクラファンの応援メッセージをお願いしましたら、すぐ電話を下さり、この目標金額では経費は足らないだろうとすぐ反応して下さり、翌日にはメッセージを下さいました。更にSNS発信をお願いし、すぐフェイスブックに上げてくださいました。お社長パワーはすさまじく、フェイスブックに上げて頂いた1時間以内にババババババっと支援者が増えました。さすがです。お社長はメールに「なんでリターン商品におかた茶屋の商品券とお土産をつけなかったんだ。」とも伝えてきました。これがタコ社長の恐るべしところなのです。型ににはまらない知恵の人です。私は修行が足らないです。

 今回の「祈りのかたち」の榛名神社の随神像修理は、上毛新聞の上州風の連載の始めから訴えてきたことでした。その思いがご縁になり、榛名神社の佐藤眞一宮司と知り合うことができまして、修理して下さる方を探していらっしゃるというお言葉を受けて、すぐお社長に電話をした次第です。結果的に籔内工房が修理をすることになりました。本当は丙午の大祭の後修理をする方向でしたが、今月から修理が始まります。まあ、もう細かいことは書きませんが、修理が決まって私も大変うれしいです。

 富岡の展覧会に重源さんがいらっしゃり、榛名の随神像の修理が始まる事実と「祈りのかたち」の本の出帆と重なって、タコ社長、もといお社長、もとい籔内先生のパワーを久しぶりに浴びました。

 お社長、先日プレゼントしたQRコードのPOPは今月末までは捨てないで、お社長の机に飾って下さい。お社長に会いにくるお客様に向けてくださいませ。幸せのサイトが見えます。ボタンを押すと未知の世界が始まります。よろしくね。そしていつまでもお元気でいて下さい。

2021/10/11 09:43