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【不完全燃焼の連載『祈りのかたち』を書籍化】視覚障がい者にも読める本「LOW VISION BOOK」を広めたい

謝辞彫刻野郎 10月1日

 私は仏像のことであれば、おおよそ大体の感想は語れると思いますが、社寺彫刻は正直不勉強だと素直に白状します。今回祈りのかたちを書くにあたって一番自信がないのが社寺彫刻です。そのため先生を2人に御指南を仰ぎました。その一人が井上進一さん、もう一人が水口健さんです。健ちゃんは私の仕事を手伝って15年たちますが、本来は井上進一さん達と社寺彫刻を主に彫る彫刻師が本業です。健ちゃんは井上さんが紹介してくれた職人さんだけど、井上さんとの出会いは籔内佐斗司さんの工房でした。私は大学院の学生の時を含め3年半アシスタントとして籔内さんの工房で働いていましたので、そこで出会ったのが井上さんでした。

 

 私は美術大学出身だけど、美術大学卒業した人より井上さんや健ちゃんと仕事をする方が相性がいいです。私は芸術家らしいところは全くなく朝早起きだし、時間に正確だし、気分の抑揚も少ないです。正確に一定のリズムで仕事はこなしますので、体質は職人そのものです。

 

 

 さてさて彼らの話をもう少し書きます。彼らは富山県の井波で修行をして親方の家で寝食をともにして働きながら学んできた分、非常にたくましいです。そして何より彼らと知り合って、一番驚いたことは、彼らがほとんどプロの職人だという事実でした。美術大学の卒業生は冗談抜きで9割は彫刻のプロにはなれません。あるいはなりません。現実は厳しいのです。なぜ彼らがプロになれて、我々美術大学出身がプロになれないかの決定的な違いはどこからくるのか少し途惑いました。彼らといっしょに仕事をすることで、当然というか、当たり前の事実に気づきました。どんな仕事でも有難く受けること、〆切は何があっても守ること、仕事を下さるのは美術の専門家はわずかで、ほとんどが一般人だという事実です。自分が作ったものを一方的に渡すのではなく、仕事を下さる方が何を望んでいるか考え、更には仕事を注文して下さった方の望み以上のパフォーマンスができると、次の仕事がやってくるという仕事のからくりに気づきました。本当に彼らに出会うことで私の制作姿勢ががらりと変わりました。

 

 

 井上さんと健ちゃんはどこに行っても周辺の社寺に挨拶に行きます。一昔前は地図を車に載せていて、いい出来栄えの社寺に出会うと地図に○印、残念な社寺の場合は残念でしたのマークを付けています。群馬の社寺も魅力がありますが、隣の栃木の日光、鹿沼彫刻、新潟の石川雲蝶、長野の諏訪神社周辺など健ちゃんもブログで書いているように突出した彫刻群が本当にたくさんあります。私は眼の病を治してからこの群馬の近隣の祈りのかたちを更に取材したいと考えています。神さまが私がやるべきだと判断すればチャンスは与えて下さると信じています。まあ、見えるようにならなければならないなりに社会貢献できる仕事を模索します。私よ、知恵を絞ろう。健ちゃん引き続き仕事よろしくね。

 

 

 

2021/10/01 11:56