榛名神社の佐藤宮司から応援メッセージを頂きました。ありがとうございます。この文章を読み解くと、確かに私がおせっかいなほど訴えた修理保存への思いを榛名神社さんがきっちり受け留めてくれたという事実は確かにあります。ですが、そもそものきっかけは上毛新聞社刊「上州風」の連載でした。
祈りのかたちの冒頭で、上毛新聞社出版部富澤隆夫さんが書いてくださいましたが、15年前富澤さんとこの本のデザインを担当されている寺澤徹さんが私のアトリエに訪ねてきて下さって、執筆依頼をして下さった時、迷わず私は榛名神社の随神のことを書かせていただきたいとお伝えし、その思いを引き受けて下さるということで全てが始まりました。
上州風は廃刊になりましたが、どうしても自分の思いを完結したくてお財布にお金がないくせに、大博打をしてクラウドファンディングで本を作ることを決心しました。であればお世話になった上毛新聞の出版部で本を作り、クラファンも上毛のハレブタイを選択しました。本作りを始めて体験して思ったことは、出版業界が厳しい状況だということが、肌でわかりました。文化は数年で育たない、他の業務のように年度内で経費の収穫を得られることを求めるとそもそも文化事業はできません。この榛名神社のこともこの結果に導かれるのに15年の年月を必要としました。白衣観音の取材も上州風の森村すずさんの特集が大事な情報源となったのが正直な話です。取材するべき時にまとめないと、もう他界したすずさんの気持ちを聞くことはできません。群馬県立近代美術館で開催された「森村酉三とその時代展」を担当した神尾玲子さんも上州風の記事を活用されたとおっしゃっていました。文化のチカラ、文章のチカラは静かに静かにバトンが関係者に渡されるのです。謙虚に、優しく。
ものには陰と陽があります。社会経済活動を陽とすれば文化はまさしく陰でしょう。陰は大きく前に出ませんから何も動いていないような気がしてしまうのでしょう。富岡製糸世界遺産群の陽が富岡製糸場であり養蚕信仰が陰だと思います。学校教育の数学国語などの数字で表せる教科が陽であり、芸術は陰だとも思います。更に申し上げると会社、企業の経済活動が陽であり、メセナの活動は陰だと思います。
切り口を代えます。陽のチカラをつけるためには、陰を育ててこその陽なのだと思います。経済で潤沢の資金を蓄えたいのなら、どこよりもメセナ活動をすること、群馬県の学力を上げたければ芸術を重んじること、富岡製糸場に観光客をたくさん呼びたければ、養蚕信仰を大切に守ることのような気がするのです。
どうか群馬の教育委員会の方々、高校の芸術分野から美術の授業を削らないでください。群馬のお役人の方々富岡製糸は養蚕信仰を語ってこその世界遺産群です。上毛新聞社さん、どうか群馬の文化を支え続けて下さい。上州風を復活して欲しいとは言いません。上毛新聞社が文化を牽引しなくて誰がやる、上毛新聞が文化活動を応援すればするほど、我々は上毛新聞を応援します。
「祈りのかたち」を作るために尽力して下さった富澤隆夫さんと上毛新聞社出版部に心から感謝申し上げます。