30年来のお付き合いがある彫刻家の三輪途道（みわみちよ）さんから、『祈り のかたち』（上毛新聞社）という立派な書籍が届いた。彼女が自分の故郷である群馬県下の仏像や神像などの文化財を訪ね歩き、随想にまとめた大変魅力的な労作だ。
若い頃から彫刻家としての能力と感覚はずば抜けていたうえに、並外れた努力家だった。まだ東京藝術大学大学院の学生だった頃に制作した東大寺俊乗堂『重 源上人坐像』の模刻制作は、誰もが驚く迫真のできだった。しかし、文章にもこんなに才能があったのかとあらためて驚いている。見て良し、読んで良しのとても美しいお得な書籍に仕上がっている。
じつは彼女は、十年ほど前から難病によって徐々に視力を失いつつある。それ をありのままに受け容れて、本書の半分が、見えにくいことを逆手に取ったLow Vision Bookの体裁にしてしまった。何事にもくじけることのないその前向きな強い生き 様には、心底敬服している。
さて、この書籍は上毛新聞社からの発行だが、限りなく自費出版に近いのでは ないかと思う。そして目標金額が252万円というずいぶん控えめなクラウドファ ンディングを展開しているが、総経費は、おそらくその倍はかかっているのでは ないかと心配している。
そこで、ひとりでも多くの方にファンディングにご参加頂き、この意義ある素 晴らしい書籍が世間に広まることを願っている。
上毛新聞社のクラウドファンディング『ハレブタイ』 【不完全燃焼の連載『祈りのかたち』を書籍化】 視覚障がい者にも読める本「LOW VISION BOOK」を広めたい
籔内佐斗司 彫刻家、東京藝術大学名誉教授、奈良県立美術館館長
