祈りのかたちの本を作るにあたって、きっかけになったのが榛名神社の随神像です。皆さん見たことはありますでしょうか。榛名神社は参拝に行っても随神門を必ず通るはずですが、ほとんどの方は見ていないかもしれません。第一随神像という言葉も聞きなれない方が多いと思います。随神門はお寺でいえば仁王門です。阿吽の金剛力士像が安置されています。これが神社になると随神門、随神像になるわけです。
榛名神社の随神像は素晴らしい。少なくとも私が今まで見てきた随神の中ではピカイチです。残念ながら雨露にさらされていてとても傷んでいます。確実に修理を必要としていました。無指定文化財は全額神社が負担しなければなりませんからそうやすやす修理ができるものではありません。そのことを訴えたくて「祈りのかたち」を書き出したわけです。
今回本にまとめることが決まった去年春に思い切って神社に取材を申し込みました。たまたま電話に出られた宮司様が随神像の修理を考えていらっしゃるとお話しして下さいましたので、即私は自分の出身大学の東京芸術大学大学院美術研究家文化財保存学研究室を紹介しました。去年令和2年12月に大学の調査が入ったところで、私の本は終わっていますが、その後話はどんどん進みついに今年の秋から藪内佐斗司工房で修理が始まることになりました。この本を手に取った方が榛名神社に実際参拝に行かれてもしばらくは随神様はいらっしゃいませんので、ご報告いたします。まさか本当に修理にこぎつけようとは、思いもよりませんでした。またこの続きは機会がある時に皆さんにお伝えしたいと思います。最後に榛名神社宮司佐藤眞一様から随神像の今後の修理の予定についてお言葉を頂きましたので、ご紹介します。
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榛名神社では六十年ごとに廻り来る丙午の年に「還暦開扉大祭」が斎行されています。近年では明治三十九年(一九〇六年)・昭和四十一年(一九六六年)に祭典が行われました。次回の丙午年は令和八年(二〇二六年)で、五年後に「還暦開扉大祭」が斎行されます。
随神門に祀られている随神像は明治三十九年の還暦開扉大祭を記念して祀られたもので、今年百十五年となりました。随神門も建立より一七四年が経過し、経年劣化により修理が必要な状況です。しかしながら国指定重要文化財である随神門は国・県・市と充分修理方針や修理費等を協議しなければ工事に入ることが出来ません。随神像も躯体の傷みや彩色の剥落が進み大規模な修復が必要な状況になりました。
神社では門を修理中に随神像の修理が出来れば理想であると考えましたが、還暦大祭前の門の修理は難しいことから像の修理を先に行うことといたしました。 本年十月下旬には像は随神門から搬出され、東京の工房で修復作業に入る予定です。完了は令和五年三月下旬を予定しており、随神門が修理に入るまでの間綺麗になった随神像をご覧になることが出来ると存じます。
榛名神社社務所
榛名神社随神門 左大神像 吽形/像高:141cm*首が落ち込んでいるため正確な計測不能 髪際高:126cm 画像提供:東京芸術大学大学院美術研究科文化財保存学研究室
2020年東京芸術大学大学院美術研究科文化財保存学研究室の調査
修理が無事に進みますことをお祈りいたします。