韓国文学をもっと日本へ広めたい!
ファン・インスク『野良猫姫』出版プロジェクト

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こんにちは、CUON(クオン)出版の金承福です。韓国語圏の知を日本語圏でも共有できる出版事業を展開しています。 

↑ Photo by News To Move.com / Kanae Miyazu

ここ数年、日韓の文化交流は、日本における韓国ドラマの流行のみならず、韓国においても映画や漫画等サブカルチャーを中心とした日本文化が浸透し、双方向性を持ちつつあります。  

まだまだごく一部ではありますが、日韓では頻繁な情報交換が行われその距離は格段に狭まっています。そして韓流と呼ばれ話題を呼んだ文化の背景には、いまだ日本語圏の人々が見知らぬ奥深い韓国文化が広がっています。  

↑ 2013/6/30 読売新聞

私は韓国のコンテンツのひとつである"韓国文学"を翻訳出版しており、2010年から主に韓国で2000年以降に発表された作品を「新しい韓国の文学」シリーズとして出版しました。

01『菜食主義者』ハン・ガン著、きむふな訳

02.『楽器たちの図書館』キム・ジュンヒョク著、波田野節子/吉原育子訳

03.『長崎パパ』グ・ヒョソ訳、ユン・ヨンスク/YY翻訳会訳

04.『ラクダに乗って』シン・ギョンニム著、吉川凪訳

05.『都市は何によってできているのか』パク・ソンウォン著、吉川凪訳

06.『設計者』キム・オンス著、オ・スンヨン訳

07.『どきどき僕の人生』キム・エラン著、きむふな訳

09.『耳を葬る』ホ・ヒョンマン著、吉川凪訳

↑新しい韓国の文学シリーズ

本が刊行されると多くのメディアで紹介され、多くの読者から応援のことばもいただきます。また、韓国文学に興味を持ってくれた書店員さんに力で、書店でのフェアも開くことができました。

↑紀伊国屋 新宿本店-カリスマ書店員、仲千里さんのセレクト

↑神保町の名所―東京堂で韓国文学フェア

日本の読者へ作品を近づけるために、作品を紹介するだけではなく刊行に合わせて著者と日本の作家をお招きし、対談やトークイベントを開催しています。
韓国を代表する詩人シン・ギョンニム氏と日本を代表する詩人谷川俊太郎氏の対談や、パク・ソンウォン氏と小説家中村文則氏の対談、キム・エラン氏と川上未英子氏の東京国際ブックフェアでのトークは、大勢の読者と一緒に盛り上がり大変楽しい時間でした。

↑2012/6/30、在日本韓国YMCAスペースYホールにて、『ラクダに乗って』
刊行記念イベントを開催

↑2012/11/9の池袋ジュンク堂でトークショーを終えた翌日、表参道に近い北青山の
KFIビルの地下スペースにて、パク・ソンウォンさんの来日を記念して、
出版記念パーティを開催


↑2013/7 東京国際ブックフェアでキム・エランさん、キム・ヨンスさん、

川上未英子さんのトークイベントには、ほかの講演に来ていた平野啓一郎さんが

サプライズで登壇し会場は更に盛り上がりを見せました。


↑2013/9/29 クオンプロデュースで行われた韓国パジュで第2回の谷川俊太郎×

シン・ギョンニム対談。(クオンのプロデュースで、谷川さんの2冊の本がこの時

韓国語で刊行されました。)

今回、是非このプロジェクトを通して翻訳出版したい本は、

韓国で注目を浴びているファン・インスクの小説:「도둑괭이 공주(邦題:野良猫姫)」」です!

この小説は、周囲の白い目にもめげず、せっせと野良猫の世話を続ける20歳の女の子ファヨルの物語です。(応援したくなる恋愛場面もあります。)

作者自身も5年前から野良猫の世話をしており、あとがきで「もっとも辟易するのは、猫のエサやりに対する人々の敵意。毎回、超緊張状態でまわるそう。そこに加え、人の手で育てられ途中で捨てられた猫たちが日一日と壊れていく姿を見る苦痛……大げさではなく、野良猫たちと関わるようになって以来、不幸を味わわない日は稀だ」と語っています。


あらすじ

ここは、ソウルの古い住宅街。都市再開発の手がまだ伸びておらず、山の斜面にくもの巣のように路地がめぐらされ、家々が密集したエリア。ここで主人公ファヨルと野良猫たちの交流が始まる。

ファヨルは高校を中退した後、一人暮らしをしながら、コンビニのアルバイトで生計を立てている。両親はいない。ファヨルと猫の出会いは、母がいなくなり、おばのところで世話になっていたときに遡る。いとこが大学の入学祝に子猫を買ってもらった。あくまでそれはファヨルの猫ではなかったし、おじの短気によって、いくらもしないうちに他所にもらわれていってしまうのだが、ファヨルはこの時からインターネット上の猫愛好家の集まりに参加するようになる。オンライン/オフラインにまたがる彼らとの交流は、知らず知らずのうちにファヨルの生活を彩りのあるものにしてゆく。

読み進めるうちに気づくのは、ファヨル自身が幼くして母親に捨てられた「野良猫」そのものだということ。ファヨルの母は決してファヨルを愛していないわけではなかった。それでもファヨルを手放さなければならない事情があった。そして、ファヨルは野良猫と同様、そのような現実を一方的に受け入れるほかなかった。しかし幸いにも、野良猫ファヨルには、自分を保護し、大きな愛情を持って見守ってくれるキャットマム(野良猫の世話人)がいた。それは他でもない、ファヨルが猫を通じて出会った人々である。彼らは、ファヨルの心の飢えと渇きを癒し、いつでも立ち寄れる安息の場でもある。

「野良猫姫」には、大きい事件も大成功も出てこない。ただ、淡々と日々正直に丁寧に生きようと心がける人々と野良猫たちの些細な日常が描かれているだけだ。大都市ソウルのせわしない日常の中、実は自分のすぐ隣でも、このような健気な人々が互いを思いやり、生命を慈しみ、支え合って楽しく暮らしているのかもしれないと思うと、じんわりと優しい気持ちがこみ上げてくる。

私がこの本を選んだ理由は・・・

ファヨルとその周りの人たちの健全さに心が洗われました。 読み進めるうちに気づくのは、ファヨル自身が幼くして母親に捨てられた「野良猫」そのものだということです。ファヨルの母は決してファヨルを愛していないわけではありません。それでもファヨルを手放さなければならない事情があって、それは飼い猫が捨てられるときに似ています。

そして、ファヨルは野良猫と同様、そのような現実を一方的に受け入れています。 そして、ファヨルが野良猫をかわいがるように、野良猫ファヨルに温かいご飯を食べさせ、何かと気にかけてくれるのが、コミュニティサイトの仲間たちです。でも、この人たちの中には、そんなに裕福でなくて、その日暮らしの野良猫のような生活をしている人もいます。

ところが、ファヨルもファヨルの周りの人たちも、全く恨み節でないんです! 自分をかわいそうだと嘆いたり、社会のせいにしたりせず、全く卑屈になることなく、ただ自分の力で生きています。

『野良猫姫』には、大恋愛も大成功も出てきません。日々正直に丁寧に生きようと心がける人々の、猫にからんだ些細な日常が描かれているだけです。殺伐とした大都会の、実は自分のすぐ隣でも、このような健全な人々支え合って楽しく暮らしているのかもしれません。そう思うと、何だかじんわりと優しい気持ちがこみ上げてきます。


韓国で話題の作家、ファン・インスク(황인숙)

1958年12月21日ソウル生まれ。ソウル芸術大学文芸創作科を卒業。 1984年京郷新聞新春文芸に詩「私は猫に生まれます(나는 고양이로 태어나리라)」が当選し、詩壇にデビュー。詩集に「鳥は空を自由に放たれて(새는 하늘을 자유롭게 풀어놓고)」(1988)、「悲しみが私を覚まさせる(슬픔이 나를 깨운다)」(1990)、「解放村の猫(해방촌 고양이)」(2010)など。1999年に東西文学賞、2004年にキム·スヨン文学賞を受賞。

何故このプロジェクトを立ち上げたのか?

いままでクオン出版で出した本やイベントはよく考えてみれば、仲間内のモノだったように感じています。韓国文学の世界をまだ知らない人にも伝えたい、面白いものを一人でも多くの人と共有したい。出来上がったモノからではなく、種をまくところからみなさまと一緒に一冊の本を作り上げていきたいと考えたからです。

韓国でこの小説はネットで連載され、読者の声援で紙の本として刊行されました。日本では読者が出し合った資金で本を作っていきたいです。そして、是非この小説を日本の多くの方々にも読んでほしいと思います。

プロジェクトが成功すれば、すでにクオン出版から出している「新しい韓国の文学シリーズ」としてシリーズに加わります。これをきっかけとして、日本にもっと多くの面白い韓国現代文学を広められるように活動をしていきます!

日本の文化人もサポート

多くの日本の作家からも、このプロジェクトをご支援頂いています。

▼作家・中沢けいさんからのメッセージ
「こうやって日本語で再び生まれたとなりの国の小説から、ここ日本で面白いアニメができたり映画ができたりまたかわいいキャラクターができたりすることはどんなに楽しいものか。」

リターン

ご支援頂いた金額により、様々なリターンをご用意しております。

・クオンシリーズのイラスト ハガキ10枚セット
寄藤文平さん+鈴木千佳子さんによる、文平銀座デザインです

・『野良猫姫』の奥付に、スペシャルサンクスとしてお名前(漢字、ハングル両方)を掲載
例 : 山田 太郎・야마다 다로

・クオン出版「新しい韓国の文学シリーズ」全9巻
韓国の「いま」がわかる「新しい韓国文学シリーズ」全9巻です。ぜひ、韓国文学の豊饒な世界を通して、隣国・韓国の「いま」を感じ、味わってください。

・クオン企画、三進トラベル手配で恒例の「パジュ出版都市をめぐるツアー」ご招待
日時:2014/9/26~2014/10/5のうち、3泊4日

2012年ツアーレポート
2013年ツアーレポート

★Photo by Saya Tsukahara

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