市井にいきるトランスジェンダーと、となり合わせるわたしたちのための物語--トランスジェンダー漫画家「とらんす少女ちゃん」初短篇作品集 『となりのとらんす少女ちゃん』(仮)

クラウドファンディング終了前夜に

9月23日(日)未明にはじまった「となりのとらんす少女ちゃん」出版クラウドファンディングも、いよいよ明日11月23日(土)をもってご支援の受付を終了いたします。
22日(金)21時現在、ご支援くださったひとの総数は221名、ご支援いただいた金額は総額158万2700円となっております。
まずは、謹んで感謝を申し上げます。
 

第二の目標として掲げた、初版5000部を制作する費用と同額である250万円の到達は、残念ながら難しい状況となっています。
ただ、クラウドファンディング期間中、さまざまなできごとに対応するなかで、かならずしも初版部数にこだわることはないのではないかと考えるようになりました。
それよりも、長く、広く読まれる作品にすることが大切なのではないかと、いまは思います。


「となりのとらんす少女ちゃん」を、重版がなんどもかかる愛される書籍にすること。それを真の目標とあらため、残りわずかとなったクラウドファンディング期間を走り切りたいと思うところです。

そのために、あとすこしだけご支援を募りたいと思います。
このクラウドファンディングは、資金を集めるということのみならず、さまざまなかたと対話や交流を深めるきっかけにもなりました。その結果、開始前には到底思いつかなかった発想を得ることにもつながり、追加費用を計上することにもなりました。

例えば、トランスジェンダー当事者ではないひとたちにもより広く読まれてほしいという目的で、理解を行き届けるための解説をつけることなども検討しています(どのようなかたちでリリースするかは未定)。

資金に余剰ができるとより選択肢が増えますので、追加のご支援に恵まれると非常に制作が進めやすくなります。
どうか、情報の拡散(ということばは、あまりすきではないけど……)にご協力いただけますと、うれしいです。

 


クラウドファンディング期間中は、ほんとうにいろんなことがありました。

とくに、第一目標額を達成したのち、アンチ・トランスジェンダー層の攻撃を受けたことで、ネットの言論空間での展開に行き詰まりを感じるようになりました。以後、各地の書店さまをこの身体ひとつで回り、チラシの配下をお願いしていくということを続けてきました。

実際のご支援につながったかどうかという以上に、各書店さまの売り場で生の本に触れるということが、多くのことを学ばせてくれました。

大きな版元の本も、ちいさな版元のそれも、みな一様にあたたかみがありました。
その熱源は、著するひとたちの、ほかのだれにもなれないじぶん自身を生き抜く覚悟というものではないかと、いまにして思います。

そして、組版も、印刷も、裁断も、機械のちからを借りていたとしても、すべて人間の血が通った仕事だということ。そんなあたりまえのことを忘れている自らに気がつきました。

訪れるお客さまもそれぞれ。
でも、ただ、本を愛するひとがそこにいるだけでした。

わたしは本を選びながら、その売り場に「となりのとらんす少女ちゃん」がならぶイメージを、脳内へ描きました。
 

 

分断が広がる世の中です。
だれもが自らの正しさを喧伝し、意に染まない相手をあしざまに罵り合っています。

だからこそ、このクラウドファンディングのタイトルとして銘打った「市井にいきるトランスジェンダーと、となり合わせるわたしたちのための物語」を、決してただのきれいごとにはしたくない。分断を乗り越え、ともに生きる世の中の礎となる本として送り出したい。
作者・とらんす少女ちゃんの描く物語にはその力があると、わたしは信じます。

かならず素晴らしい作品集にしてお返しいたします。
よろしくお願い申し上げます。

 

合同会社在野社
代表・編集責任者 浅野葛

 

2024/11/22 21:11