こんにちは!足湯カフェどんよくです。
東京は今日も雨で、中々お日様が見られない日が続いています
週末は台風も接近するようですので、お気をつけてお過ごしください。
さて今回は9月9日のトークイベント「百合とLの世界と距離」のレポをお届けいたします!
スズキハルカさんのライブドローイングもこれでラストです。どんなイラストになったのかお楽しみに
司会者大路とケイで、ゲスト二人を迎えた。
百合とLの違い、百合写真撮影の裏話、司会者二人を百合写真に撮るとしたらどんな設定になるか等、ざっくばらんにトークが繰り広げられた。
高橋みのりさん
1992年生まれ/フォトグラファー。女性目線から切り取る女の子たちの世界。展示会以外にも自主制作百合マンガ誌「ガレット」に第一号より写真を掲載している他、多くの百合ファンで賑わったイベント「百合ナイト」にも出演
レロさん
高校生の時からLGBTコミュニティにて活動開始。その後、一旦LGBT活動を離れ、アイドルや百合などのサブカルチャーのファン活動を行っていた。現在は、慶應義塾大学社会学研究科後期博士課程にて、ジェンダー・セクシュアリティの社会学を研究している。
2017年度Tokyo Rainbow Prideレインボーウィークでは、「アイドル×LGBT=?」を主催。アイドル好きのLGBT当事者や支援者とともに、〈アイドル〉と〈LGBT〉の親和性について、参加者の発表と交流を通じて考えた。
高橋さんの百合写真を壁に投影しながらトークを進めていった。
大路「本当に綺麗な写真だなぁ。」
ケイ「いいねぇ」
大路「私はレズビアンだけれど、こういう女性同士の百合の世界に全く詳しくなくて、ただただ可愛いな、綺麗だなって思いながらも『こういう恋愛したかったなぁ!』って感じます(笑)
高橋さん、いつからこういう写真を撮り始めたんですか?」
高橋「最初に撮ったのは2014年です。本格的に定期的に撮るようになったのは、2~3年前くらいです。」
大路「もともと百合好きだった?」
高橋「百合好きだったというよりは、可愛い女の子が好きで。アイドルオタクだったので、そこから派生して女の子を撮りたいなって思い始めました。」
大路「女の子単体じゃなくて、あくまで誰かと一緒にいるところがいい?」
高橋「そうですね。そうすると自然体になりやすいし、表現の仕方も変わるので。」
(教室にいる女子高生の百合写真を見て)
ケイ「やん。こういう学生生活を送りたかったなぁ。」
大路「っていうのがレズ目線なんだろうね(笑)参加したいんだろうね(笑)」
男性と女性二人の写真だとやっぱりちょっと違うんでしょうね。」
高橋「そうですね。男性には写真としての魅力はあまり感じないです。女性の方が撮っていて楽しいし映えます。」
ケイ「百合に目覚めるきっかけってあったんですか?」
高橋「アイドルのDVDのメイキング映像を見て、手を取り合ったり、裏で頑張ってるのを見て尊いなぁと。」
ケイ「ちなみにアイドルは何が好きだったんですか?」
高橋「48グループと坂道グループがすごい好きです。」
レロ「アイドルのメイキング映像って百合の宝庫だと思う。 本編見るよりも私はDVD買ってきたら先にメイキング見ます。>メイキングを見た後にライブを見ると、あのいちゃつきはここに繋がってたのかぁというのも分かり、見方が変わって面白い。」
大路「レロちゃんの見たい百合と、自分が恋愛したい対象に差はあるの?」
レロ「私は多分百合界の中では珍しく、割と雑食タイプ。」
百合界には、推しのカップリングというものが存在するそうだ。
例えば、ヘタレ攻めと誘い受けのカップル、異性愛のように見える王子と姫のようなカップル、ショタっぽい子とお姉さん系のカップル、など。
レロ「いろんな組み合わせがあるけど、私は結構なんでもいけちゃうタイプで、百合は自分の恋愛どうこうというより二人の関係性そのものとして尊い。
この二人だからこそ、この関係性が成り立つんだな、みたいな。」
大路「キャラ自体というより、二人の関係性を見てるんだ。」
大路「高橋さんの一番お気に入りの百合写真は?」
高橋「このウェディングの写真。これは百合という概念で撮ったのですが、初めてレズビアン界隈の方にも反応を頂けた写真です。わざわざ「すごく夢があって良かったです」というDMも送ってくださったり。それまでは百合は「可愛い、尊い」、そういう感想ばかりだったので、自分の中でワンステップ上がった写真かなって。」
大路「顔が見えてないのがいいのかもしれない。」
ケイ「あとこのストーリー性ね。同じ二人なのかなぁっていうね。」
大路「確かに。想像力をすごく掻き立てられる写真だなって思うんですよ。百合っていう関係性でも見れるし、我々界隈からすれば自分を投影できたりするような気もするしっていうところかな。」
ケイ「あと単純にこういうカップルがいたら勝手に幸せになるっていうか」
大路「写真を撮るときにストーリー性とか考えてとりますか?」
高橋「撮るときはほとんど考えない。撮影する前に、どちらがどういう関係性かだけ軽く伝えてあとはモデルさんが動いてくれるスタイル。」
大路「今写ってるちょっと背の高いショートカットの女の子に髪の長い子が『大好き!』って感じで抱きついてるように見えるけれど、これもモデルさんに伝えてじゃなく自由に?」
高橋「勝手に動いてもらってます。」
ケイ「それは楽しい。」
高橋「このとき虫がいたんですよ。虫がいて、怖くて最初『ムリムリ』って言ってたんだけど、脇の下コショコショってしてそのあとにこの画になった。」
大路「そのメイキングないんですか?(笑)全部指示しているのかと思った。」
ケイ「じゃあ偶然の産物的な。」
高橋「そうですね。」
ケイ「意図して作ることもあるだろうけど、大体はモデルさんに任せていると。」
高橋「学生服の時は学生さんに任せっきり。衣装っぽい時はある程度指定してます。」
レロ「モデルさん達ってこういう撮影に慣れてるんですか?」
高橋「中には女の子と付き合ってる人もいるし、基本的に本業がモデルじゃない人が多い。趣味でコスプレの撮影をしている人だと、女の子同士で撮影していることが普段からあるので、そういう面では慣れてるのかな。」
高橋「この写真の二人はとても仲が良いんですけど、初対面同士だと動きが硬いままなのでこちらからある程度指示しています。」
大路「二人の関係を想像するような写真が多くて、友達以上恋人未満なのかなとか、全部同じ結論に至るんだけど『こういう恋愛がしたかったな』って(笑)」
ここで、もし司会者二人を百合写真に撮るとしたらどんなシチュエーションに仕上げてくれるのか、高橋さんに考えてもらった。
高橋「大路さんは社会人百合かなぁ。最近界隈って社会人百合が流行り始めていて、学生百合よりも伸びがいい。」
大路「どういった社会人?」
高橋「Bar系(笑)大路さんがバーテンダーのお姉さんで、そこに疲れたOLの女の子が来る。」
大路「爽やかにはなれないのね(笑) ケイさんだとどんな感じになりますか?」
高橋「なんだろう、大路さんとは違ってお外とかの方が」
ケイ「お外?やった!健康的!」
高橋「例えば、紅葉の銀杏並木をツインテールのちっちゃい子と歩く、20歳くらいの歳の差のある百合。」
ケイ「犯罪臭がする(笑)」
そして最後に、ゲストのレロさんを撮る場合の百合写真の設定を考えてもらった。
高橋「絶対学校の先生。教師と生徒。私の第一印象として、強そうでお説教してくれそうに見えるのでそういう感じかな。」
ケイ「わかる。強そうに見えて実は弱かったりとか、依存されてるように見えて実は依存してたんだ、みたいな。」
レロ「あながち間違ってない(笑)」
大路「女の子二人の恋愛を書く時は、自分の体験はそこには反映されない?」
高橋「したことないですね。」
大路「自分の恋愛観とは別物って感じなんですかね。」
そもそもゲストのお二人は恋愛漫画を読むのだろうか。
高橋「一番少女漫画を読んでました。結構恋愛もの好きでした。」
レロ「私は、少女漫画はそんなに読んでない。男性が出て来るところでがっかりするので。なのでその代替として百合漫画を読んでた。」
大路「私も読むとしたら社会人百合で、恋愛漫画の代わりに読む。女の子同士なのにっていう葛藤をすっ飛ばしてくれている作品が結構あるから、こちらとしてはその辺飛ばしてくれていた方がありがたい。そこはもう越えてるんで(笑)」
レロ「一昔前までは、百合は『イケナイことなんだ』っていう扱いだったけれど、最近はそこまで禁断ではないものになってきた。」
禁断性についてどう捉えているか、高橋さんにも質問をした。
高橋「私の場合は、完全に作品という感覚で撮っているので、同性同士恋愛をしているもどかしさは基本的にはなく、幸せな写真の方が多い。二次元と三次元の違いっていうのも難しいところではある。
物語を書く人だったら、この写真からどう展開して行くとかワンクッションあれば、写真の見方が変わって来るのかなと思う。
自分の写真に関しては禁断とか、イケナイ恋というのは出さない。」
ケイ「百合寄りというよりはレズビアン寄りというか、日常っぽいシチュエーションもちょいちょいあるじゃないですか。そういうことで気をつけていることはありますか?」
高橋「逆にレズビアンの方とたくさんお話しする機会が今までなかったので、正直想像の世界。生活感のある写真とか、いまはウェディングの写真を撮っているけれど自分の中の想像で撮っていることが多いですね。」
スズキハルカさんのイラストはこちら。二人の関係性がとても可愛い…これが尊いという感覚か…
ここで参加者から質問が挙がった。
「百合とLの違いがいまいち分からなくて、もし百合写真じゃなくてL写真を撮るとしたら何が一番違いますか?」
高橋「結局見てる人、写ってる人、捉え方によってだなと思っているので、この二人が付き合っていたとしても正直百合って言っちゃうとわからないところでもあったりするので、そこはやっぱり完全に捉える側に私は任せているところはあるのかな。」
レロ「百合のいいところって多分曖昧なところじゃないかな。曖昧だから幅がある。女二人いれば百合っていう人も世の中にはいる。ものすごくイチャイチャ、ここでは言えないようなことをしているのも百合作品としてR18の作品もいっぱいある。その幅があることによって、私の周りの百合好きの人たちを見ていると、性的志向、つまりレズビアンなのかバイなのかノンケなのか、何なのかみたいなのを突き詰めなくてもいいところが楽。
百合が好きなんですっていうのがアイデンティティになっているから、百合が好きなんですで、友達とも繋がれるしファンのオタクとも繋がれるし。」
ケイ「自分のパーソナルな部分をそんなに出さなくても百合が好きってだけで繋がれる?」
レロ「繋がれるし、やっぱりまだ社会的な抑圧がある中でレズビアンだって決めるのが辛い人もいるじゃないですか。そういう人からすると百合好きですっていうと、そういうのもいける人かもしれないっていうのは読み込んでもらえるし、実際百合好きの子たちと出会って付き合うってこともあり得るけど、そこまでいかなくてもいいかもしれない。微妙な感じを持ったままでいられる。っていうのがいいところ。」
ケイ「曖昧なところというか余白の部分、余韻があるところが百合であるみたいな感じかな。」
レロ「私はそんな風に捉えてます。グラデーションがある。」
ケイ「ちなみにアイドルの中に、絶対こっちだろうなっていう人っています?」
レロ「公言してる人は何人かいます。最近でいうと総選挙で5位だったAKBの岡田奈々ちゃんって子がバイセクシャルだって、いくつかの媒体で話をしていた。百合漫画も好きで、有料でアイドルからメールが届くモバイルメールというのがあるんですけど、それを購読していると『今日はこんな百合漫画を読んだよ!』って。 なんかそういう風に言う人が出てきてるのが面白い。」
ケイ「なんか嬉しいな。」
大路「アイドルグループは男性との恋愛は禁止だけど、メンバー同士はOKみたいなのあったりするよね。」
レロ「それも諸説ありますよね。AKBはメンバー同士でもダメだってどこかで聞きました。」
大路「諸説あるんだね。メンバー同士の恋愛OKってなった時に男性は怒らないんだね。」
レロ「どうでしょうね。」
大路「そうなった時に彼女たちの関係性って男性にとっては百合っぽく映るのかなぁとも思ったり。」
レロ「男性のオタクの中には『もう付き合っちゃえよ』って本当に思っている人たちがいる。2chとか。誰々レズだろって断定していたり。それで妄想とかを繰り広げる。」
ケイ「それ小説じゃん!」
大路「アイドルオタの男性も呼びたかったね。どういう心境なんだろう。」
レロ「男性で百合が好きな人はまたちょっと違う目線で見てるのかなって感じ。それすごい気になるところですね。」
ケイ「次このテーマでトークショーあるとしたら、色んなタイプの百合好きを集めたいね。」
高橋「今まで色んなモデルさんを捕まえて撮影してたんですけど、今年の4月からは、一組だけを追うっていう企画をやっていて。それが来年の4月で終わるので、それが今一番力を入れていること。来年に向かって自分の中でも楽しみであること。」
ケイ「百合の写真を撮り始めて5年くらいですよね。まだまだ百合の写真に対する欲的な部分があるって感じ?」
高橋「そうですね。来年いっぱいくらいまではやりたい。」
レロ「私は百合オフ会の進化したバージョンをやりたい。漫画を持ち寄ってプレゼンする時間を作るとか。それで好きな本を見つけていく。プレゼンしてれたら興味が合うか合わないかも分かる。」
ケイ「新しい扉が開けるかもしれない。」
トークショーを聴くまで、百合とLには決定的な違いがあるものだと思っていた。しかしそれは受け手側の見方に任せる部分が非常に多い。百合は曖昧なものでグラデーションであり、はっきり断定できる世界ではない概念がセクシャルマイノリティと似通っている。
とどのつまり、自分のアイデンティティやパーソナルな部分を言葉で表現することは難しく、感覚的なものやイメージに頼ることが多いから、人間というのは面白いのかもしれない。
Written by ウエンツ
高橋さん、レロさん、ありがとうございました!