この度のカイラス巡礼の同行者が決定しました。
その一人、佐藤剛裕氏から、
読み応えのあるカイラス山概説/詳説… 兼、所信表明を頂きました!
なお、もう1人の同行者の方からのメッセージにつきましては、
回を改めて掲載する予定ですので今しばらくお待ちください。
---------------以下、佐藤氏の文章になります---------------
はじめまして。
今回、カイラス山プロジェクトに参加することになりました佐藤剛裕と申します。ヒマラヤ一帯に残っている古い形のチベット仏教を長いこと研究しております。
カイラス山の間近には行ったことがないのですが、私が調査に訪れていたネパールのドルポやムスタンといった地域は大まかに言うと西チベットにあたり、カイラス山の周辺と文化的にも政治的にも近い場所でした。ですから、西チベットに行けるというのは願ってもないチャンスでした。
西チベットは現在チベット語でトー・ンガリ地方と呼ばれていますが、古い時代にはグゲ王国が勢力を持っていましたし、さらにチベットに仏教が伝わるよりももっと古い時代にはシャンシュン王国という国も存在していました。ボン教と呼ばれるチベットの神道のような宗教の起源はその地域なのです。
チベットには、山の尾根や峠などの強い風の吹くところに掲げておくタルチョというお札の旗があります。その旗には風に乗って飛ぶという伝説上の馬(ルンタ)とともに祈りの文字が刷られていますが、それが雨風にさらされて消えていくことで祈りが天に届くと考えられているのです。このような素朴な自然に対する感覚は仏教のものというよりも仏教以前からの、宗教が宗教になる以前から伝わるとても古い感性だと思います。今回、クラウドファンディングにご協力いただいた皆さんのご希望される方にはカイラス山の巡礼路にある峠に代理でタルチョーを奉納してくることにしております。
カイラス山という山はとてつもなく古い時代から宇宙の中心にそびえる須弥山として崇められてきました。仏教やボン教だけではなくヒンドゥー教やジャイナ教などインドの様々な宗教的伝統においても須弥山と同一視されており、様々な人々が巡礼にやってきます。多くの巡礼者は一生に一度のことで道中に死んでもよいという覚悟でカイラス山にやってきますし、実際に巡礼の途中で亡くなる方もたくさんいます。
そのような人々はカイラス山の中腹で鳥葬にふされることになりますが、そうすれば必ず極楽浄土に往生できますから、むしろ喜ばしいことと捉えられてもいます。
私は体力にはそれほど自信がありませんが、フィールドワーク中に写真や映像を撮ったりすることもあるので、幸村さんの機材のセッティングなどのお手伝いもできるかと思っています。でも、ただの撮影旅行として行くのではよそ者が来たとしか思われず、チベットの人々だけでなく山の神様にも受け入れてもらうことができないでしょう。そうならないように、チベット語の能力を生かして、巡礼者の皆さんや現地の村の人々、お寺のお坊さんたちと交流を深めながら少しずつ敬虔な気持ちになって旅をしたいと思っております。
帰ってきた際には撮影してきた写真などをお見せしながら旅の様子をお話しする報告会を開きますのでぜひお越しくださいませ。クラウドファンディングへのご協力、何卒よろしくお願い致します。
佐藤 剛裕