3月20日(日・祝)に調布市文化会館たづくりで開催される「月と森の記憶」公演。このたび、調布公演の主催者である調布市文化・コミュニティ振興財団から、田川がインタビューを受けましたので、ここに掲載させていただきます。このインタビューは全5回となり、今回はその第1弾となります。今後も順を追って掲載してまいりますので、どうぞお楽しみに♪
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─ふつう、音楽の公演というと、まずは演奏家や曲目から考えると思うのですが、今回は田川さんの作品から構想が広がって、公演を行う、というところがとてもユニークですね。
はい。2015年1月に、調布市文化会館たづくりで行われた「クリエイティブリユースでアート!」という展覧会に制作者のひとりとして参加しました。調布のまちから出た端材・廃材を使って作品を制作する、というものだったのですが、廃材をいただいてから約3か月の制作期間がありました。展示室での滞在制作中にその場所や廃材から僕が感じ取ったイメージは、パイプオルガンのような音色の帯状の七色の光が天に昇って伸びていく姿でした。まるでかぐや姫のような、聖母マリアのような印象でした。
─「廃材は歌う」というタイトルでしたね。月と女性のイメージ、長く止まっていた針が動き始めた時計、ガラスや木箱にかすかに共鳴するパイプオルガンの響き・・・絵画、音楽、時間、光などを総合的に表現した非常に神秘的な空間でした。
この作品の前で「大好きな歌手と女優さんと僕の絵で舞台公演がしたい」と話していたのを、たまたま財団の担当の方が聞いて興味を持ってくださったのが、この公演につながったのです。
▲「廃材は歌う」正面の女性が向かう先は左の壁上部の月。その左下に時計がある。
─もともと舞台や音楽にも興味がおありだったのですか?
はい、もともと音楽は大好きです。高校は美術科に入学しましたが、吹奏楽部でトロンボーンを3年間毎日練習していました。ミュージカルや舞台に興味を持つようになったのは、絵を通じて井料瑠美さんに出会ってからですね。瑠美さんに初めてお会いしたときは、あまりの美しさに夢に何度も出てきたほどです(笑)。それこそ、聖母マリアのような、かぐや姫のような神々しい印象でした。
─今回の公演の広報にメインで使われている「Into the Woods」は、同名のミュージカル作品をヒントにしているとともに、「クリエイティブリユースでアート!」で描かれた“月と女性”というモチーフも見られます。
この絵は、「目には見えないけれど確かにそこにあるもの」をテーマに制作しています。ミュージカル「Into the Woods」の「複数の物語が同時進行していき、やがてひとつの物語になる」という要素をもとに、僕自身のオリジナルの物語を描いています。それぞれのモチーフにそれぞれの意味があるのですが、特にこの虹色の髪の美しい横顔は、誰にも見えていない“風”のような存在で、まるでパイプオルガンのような音色の帯が、風のように森の中を通り抜けていくような神々しさを感じています。今回の公演では、僕の作品を舞台に映しながら、歌手のお二人に歌っていただきますが、「風の色は何色?」という言葉が印象的な「Color of the Wind」は、本当にこの絵のためにあるような曲だと思っています。
▲「Into The Woods」▼月の光に導かれて少年が歩いていますが、これはタロットカードの「愚者」をヒントにしていて、僕自身です。▼画面右下の猫のような人の列は、深い森の奥にある黄色い布をまとった方の家に来たところです。この猫のような人たちは、目はあるのにずっと閉じたまま見ようとはしません。そしてこの黄色い方に「かごの中の鳥がいないような気がするので見てほしい」と聞いています。確かに鳥はいません。でも、もともと鳥なんてかごの中にいなかったかもしれないのです。▼画面左の頭に枝がある方は、アッシジのフランシスコをヒントに描いており、鳥に説教をしているところです。▼画面左上の大きな月は卵型をしていて、光が黄身のように溶け出しているようです。
─ディズニー映画「ポカホンタス」の名曲ですね。同じくディズニー映画「リトルマーメイド」からの1曲もありますよね。
今回は森をテーマにしているのに、なぜリトルマーメイド?と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、僕はこれまでずっと森の中に人魚を描いてきました。それは水中かもしれないし、空気中かもしれないですが、確かに森の中を泳いでいます。僕にとっての人魚は、まだ見ぬ世界に憧れや不安を抱く姿です。光の奥にどんな世界が広がっているのか、泳いで泳いでその方向に向かっていきます。ついに光のもとにたどりついたとき、人魚は自分の手のひらをみて驚き、そして気づくのです。光は自分自身から発せられていたことに……。初めて井料瑠美さんの「Part of Your World」を聴かせていただいたとき、胸が熱くなり、ワクワクが止まらなくなりました。瑠美さんの美しい歌声が、この絵を再びきらきらと輝かせてくれることでしょう。