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誰もが入りやすい「足湯カフェ」を新宿二丁目に

トークイベント「ある熟年カップルの生き方」 レポ

こんばんは!足湯カフェどん浴です。
三連休いかがお過ごしでしょうか?

私たちは店舗の内装の打ち合わせをしておりました!
リターンにも入っている体のプロの先生方の施術スペースやハンモックの位置など、細かいところを詰めております(工務店様にはワガママを言いっぱなしで恐縮です…)

さて、今日はトークイベント「ある熟年カップルの生き方」のレポをご紹介いたします!
そしてこの回も、イラストレーターのスズキハルカさんにライブドローイングをしていただきましたので、併せてご紹介させていただきます。

 

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トークショー「ある熟年カップルの生き方」から学んだ、「家族」ということ。

 

子供も一緒に暮らしているという40代と50代の熟年カップルのトークが始まった。
二人の馴れ初めから一緒に暮らすまで、子供へのカミングアウトの話、そして長続きの秘訣をお話してくださった。
 
ムトウさん
今年48歳。
バツイチで子供が4人(息子3人、娘1人)。上2人が独立し、下2人は一緒に住んでいる。
短髪のボーイッシュな外見で、母親としての強さだけではなく、優しさや繊細な部分も話し方から感じられた。
 
 
まりさん
ムトウさんのパートナー。 
ふんわり、おっとりとした話し方で、「癒し系」という言葉がぴったりの方だ。
 

 


左がムトウさん、右がまりさんです。ゲストにも関わらずムトウさんにはたこ焼きを作りながらお話していただきました
 
二人の出会いは新宿二丁目のBar。
 
ムトウ「見た目が可愛いというのが第一印象。そのうちに話してて飽きないなと。良い意味で世間離れをしている。とてもピュアな空間で育ったんだなと話の端々で感じられた。そして、年齢に対してピュアすぎるので騙されないか、だんだん放っておけない存在になっていった。」
 
まり「仲良くなって付き合おうかという話になっていたある時に、彼女が大根一本丸ごと切ってたんです。その後ろ姿がとてもかっこ良くて。あとサルサというトッピングで最後にレモンを絞るのだけど、丸ごと持ってぎゅっと絞る仕草もすごくかっこ良かった。そういうちょっとした仕草がかっこいいなって。」
 
どうやらまりさんは手フェチのようだ。
 
そんな二人がどのようにして一緒に暮らすようになったのだろうか。
 
まり「子供がいるのは分かっていたけれど、色々なことを考える間も無かった。
子どもとは昔も今も、友達の延長のような感じでいます。拒否されたことは全くない。
 
ムトウ「もともと色んな人が寝泊まりに来ることが多かった。自分の子供時代から家に帰りづらい姉の友達をしばらく泊めてあげたり、海外から来た友達を1か月泊めてあげたりするような家だった。そんな風潮を子供達も引き継いで。
だから新しい人と一緒に住むのは珍しくなかった。『一緒に住むからよろしくね』って感じで。」
 
子供たちにとって、人が家に来るのはワクワクと楽しいことで、来るもの拒まず、という雰囲気の家で、他人を家に入れることに昔から違和感はなかったそうだ。
 
二人の関係を子供たちは知らないのだろうか。
 
ムトウ「長男だけ知ってる。ある日絨毯を外で洗いながら、
『話があるんだけど。私は恋愛対象に男女の区別がないんだ。あなたのお父さんと別れた理由とは関係ないけれど、いま一緒に住んでいるまりが新しいパートナーなんだ』と。
息子自身が高校生になって恋愛をするようになり、私が相談を受けるようになった。彼も人を好きになって大事に想ったり悩んだりという経験をしていたので、もう話してもいいかなと判断した。」
 
カミングアウトされた息子はどんな反応だったのだろうか。
 
 ムトウ「長男はあまり顔に出さないタイプだけど、びっくりしたと思う。でも淡々と『お母さんはお母さんでしょ。それは変わらないよね。』と言ってくれた。」
 
家族内で味方がいることは非常に心強い。
しかし、一緒に暮らすにあたって、家族に反対されたり、子どもへの影響を懸念されたりはなかったのだろうか。
 
ムトウ「全く無かった。私が一人で子育てをするよりは協力してくれる人が仕事においても私生活においてもいると言うことで逆に安心してくれて。私が一人でやっていくのであれば、実家に戻ってきたほうがいいんじゃないかという話もあったけれど戻るつもりは全然なかった。」
 
実家のご家族にはセクシャリティの話をしていないが、身近に支えてくれる人がいるということで最終的に安心をしてくれたとのこと。
 
ムトウ 「今は実家に帰った時によく言われるのは『あなたと一緒にいて4人も子供がいるのを支えてくれる人は他にはいないんだから大事にしなさい』と。」
 
 
 スズキハルカさんが描いたイラスト。おふたりの仲睦まじい様子が伝わってきます!

  今、二人でメキシカンカフェを経営している。
仕事も住まいも一緒で、衝突したりすることはないのだろうか。
 
ムトウ「喧嘩はありますよ。何かあったときは徹底的に話す。それは続けていきたい関係だから話をする。」
 
ここだけは分かり合えない、平行線になってしまうことはあるのだろうか。
 
まり「私は親ではないので、子どもに対しての気持ちは永遠に理解できないと思う。それだけは仕方のないこと。ムトウさんが子どものことで悩んだ時には、ムトウさんの友達に相談したり、お母さん仲間に愚痴を言ったりしているのだけど、そこは理解してあげられないかな。
子どもと衝突して悩んでいるのを見ると、ムトウさんがいじめられているように感じてしまう時もある。そういう親の気持ちが分からないけれど、分かっても何もしてあげられないし止めるくらいしか出来ないから、分からないくらいの方が傷つかなくていいのかな。
私が変にお節介してもムトウさんも子供も傷つくだろうし、自分も嫌な思いをするから。」
 
ムトウ「彼女の立ち位置は、他人ではないけれど、私と同列で母親ではなくいてくれるから私は有難い。自分なりに一生懸命子育てをしている中で、同じ位置に立たれて言われた時には多分私は冷静ではいられないと思う。違う立場から客観的なアドバイスをしてくれるから冷静に聞けるし、共感してくれているのが伝わるから良かった。」
 
何でも一緒で、彼女の苦しみは全て私の苦しみ、ではなく、個々のスペース、世界があり、程良い距離を保ち、お互いを尊敬し合うことが、二人にとっても心地よく一緒にいられる大事な要素だという。
 
全てを共有することは出来ないことを、まりさんは寂しく感じることはないのだろうか。
 
まり「10代とか、20代の若い頃だったらそう感じていたかもしれない。今まで、家族の目が常に私に集中して向いていたから解放されたかったし自由になりたかったから、今がちょうどいいのかも」
 
そんな二人が考える、長続きの秘訣を教えてもらった。
 
ムトウ「喧嘩をしても長引かせないのはとても大事。問題がすり替わっていってしまうから。『この話はこれで解決ね!』と切替がうまいのは彼女の方で、ぎゅっとハグをしておしまい。いくら悩んでもそれ以上の答えは実はなくて、自分で難しくしているだけだなと。言葉で紡ぐのが難しい時に体で表現するのは大事だなって教わります。」
 
意見の食い違いがあるときに、大切なのは対処の仕方で、「険悪なムードで何日も過ごすほどこの喧嘩をすることが重要なのかな」と考えるようになったとムトウさんは言う。
 
そうだよね、大切なのは対処の仕方だよね…と深く共感(そして反省)するどん浴メンバー
 
まり「私が普段意識していることは、常にムトウさんを立てたい、一歩下がって支えたい、いつもそう思っている。出来ていないけれど。」
 
ムトウ「私は彼女をシンプルに大事にしたいと思うから、彼女がどうしたら幸せか、何をしていても考えている。子ども達ももちろん私が育てなくてはいけない、幸せにしなくてはいけない存在だけど、彼らはある一定期間を過ぎたら彼らの人生が始まるわけで、そこはもう私が幸せにするってことではなくなる。
でも彼女との関係は一生続けて行きたいと思った人だから、この先も私が幸せにしたいというのを根底にずっと考えて何かをやる。出来ていないけど(笑)」
 
私(筆者)も現在シングルマザーの方とお付き合いをしているので、とても興味を持ってお二人の話を聴いていた。特に共有と理解のお話はとても胸に刺さるものがあった。
 
「同じ立場で親にならなくてはいけない」というプレッシャーに押しつぶされそうになる時期もあったが、それが決して正しい形ではないのだ。共感することは出来ても、完全に理解出来てなくて良いのだと。
家族の形は、家族の数だけあるのだ。血のつながりでもなく、強引に距離を詰めるのでもなく、共に生きるチームであればそれはもう家族なのかもしれない。
それは全てのカップルに言えることだろう。
 
終始二人のトークから伝わる思いやりと、謙虚さ。
二人の柔らかな雰囲気に、会場の参加者たちも優しく包み込まれた、そんなトークショーとなった。
お互いの大切なものと世界を尊重し合う、それが長続きの秘訣なのだろう。
そんな二人が営むメキシカンカフェはきっと素敵なお店に違いない。ぜひ行ってみようと思う。
 
 written by ウエンツ
 

2018/09/23 12:57