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【イベントレポート】たった2種類のみのパンをつくるこだわりの老舗パン屋「ペリカン」 ドキュメンタリー映画化記念トーク

創業74年 浅草の老舗パン屋「ペリカン」の魅力に迫ったドキュメンタリー映画『74歳のペリカンはパンを売る。』が、来年2017年春に公開予定だ。

そして現在、映画製作記念として『ペリカン倶楽部』の部員を募集するという、ちょっぴりユニークな内容のクラウドファンディング企画も、GREEN FUNDING by T-SITEにて行われている。

今回は、11月にオープンしたばかりの中目黒蔦屋書店で映画の制作記念トークイベントが行われた。

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『74歳のペリカンはパンを売る。』の監督である内田俊太郎さん、この映画の企画・プロデュースを手掛けた石原弘之さんに加え、日々の暮らしをスタイリングする伊藤まさこさん、74年の歴史を受け継ぐ四代目であり、ペリカン店長の渡辺陸さんをゲストにお迎えし、“パンとは人々にとってどのような存在なのか”、“ペリカンがなぜ何代にもわたって人々から愛され続けるのか”など、普段はあまり語られないような本気のトークやモノづくりの極意について、縦横無尽に語られた。

img_3988左から石原弘之さん、伊藤まさこさん、渡辺陸さん、内田俊太郎さん

石原弘之さん(以降、石原):こんばんは。『74歳のペリカンはパンを売る。』の企画・責任者の石原と申します。今日は、この映画のことはもちろんですがパン屋さんのペリカンさんのことや、もっと広くパンの事についてもお話しして、もっとペリカンさんのことを知ってもらおうと思い会を企画しました。よろしくお願いいたします。

伊藤まさこさん(以降、伊藤):スタイリストをしています。私、なんで呼ばれたんだっけ?(笑)

石原:大のペリカンさん好きということで・・・

伊藤:はい、そうなんです。(笑)よろしくお願いします。

渡辺陸さん(以降、渡辺):ペリカンの4代目の店長の渡辺と申します。

内田俊太郎さん(以降、内田):監督を務めました、内田俊太郎です。自分なりのお話ができればと思っています。よろしくお願いいたします。

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映画を作ったわけ。

内田:正直、生まれてこの方、パンについて考えたことがなかったんですけど、ペリカンのパンは語らせたくなるっていうんですかね。こういうパンに初めて出会いました。カメラを通してですけど、「もっと奥行きがあるんじゃないか、ただのパンじゃないんじゃないか」って思ったのが動機で。

 

石原:まずなんで映画を作ろうと思ったのか、というところなんですけど、まず一つ目は、ペリカンには74年の歴史があるのに、四代目の陸さんがまだ30手前の若者だった、ということです。僕もテレビでたまたまペリカンさんを見た時に、インタビューを受ける方がいわゆる“職人”みたいな方なのかな~、と思っていたんですが、四代目の店長の陸さんがすごく若かったことに驚きを感じたんです。74年の歴史で、こんなに若い人?何かドラマがあるんじゃないか?というのがありました。

 

あとは食パンとロールパンのみに絞って作っているということ。「それだけでやっていけるの?」と、それを極めているというのが、すごく気になって。3つめは、僕も食べてみて純粋に美味しかった、って事です。今もお客さんがたくさん通われていて、売り切れになるほど求められ続けているという。この3つを掘り下げたいなと。

 

映画にするのは“残す”ということだと思うので、『ペリカン』という存在をもっと探求できるんじゃないかと思ったんですね。

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“白いご飯みたいなパン”

石原:先日、伊藤まさこさんの撮影でインタビューを撮らせていただいたときに、はっとした言葉があって。
“白いご飯のようなパン”という風にペリカンのパンのことをおっしゃっていたと思うんですけど。これはどういう風な意味だったんですか?

 

伊藤:ペリカンさんのパンはとにかく飽きないし、フルーツサンドとかにしてもおいしいし、おかずとも合わせられるんです。この食べ方って、白いご飯っぽいな~、と思ったんですよね。シンプルで。

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ベースがペリカンのパンだと、バターとかジャムとかも美味しくなる。「こういう風に食べたらどうかな」「こんなスープと合わせようかな」という風に、膨らむんですよね。パンに主張があるとパンだけで満足するんだけど、ペリカンのパンは色んなことを考えさせてくれるというか。毎日食べても邪魔にならないし、本当にスースーっと入ってきちゃう。スパイスが入っててどうのこうの・・・というパンも美味しいけど、あんまり考えさせずに、スーっと喉元を通っていく感じがします。

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渡辺:僕が知ってほしいと思っていたことを、今まさこさんが大体言ってくれたな、という感じです。(笑)
僕は初代のひいおじいちゃんに会えてはいないんですけど、「白いご飯のように、毎日食べ続けられるパンをうちでは作りたい」というのが一番のコンセプトだったみたいで。それは今でもそうなんですけど。

 

世の中には美味しい総菜パンや菓子パンなどもあって、それはそれでやはりすごい努力の結晶だし価値があるものだと思うんです。でもうちはそれとは逆張りで、できれば“毎日食べ続けられる”かつ“主役じゃない方がいい”という話も先代がよくしていました。ハレの日に食べてくださる方もいると思うんですけど、先代としては、毎日食べてほしいという想いで作っていたようです。

 

甘いものと合わせても、しょっぱいものを合わせても美味しいという、『味の塩梅』というものを先代はすごく気にしていていました。だから僕も、パン以外のものも食べたりして勉強しましたね。

 

「派手ではないけれども、地味に長く続けられれば良いな」というのが、作っていて思う事です。

 

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職人さんの精神世界

石原:内田さんは、実際に撮影現場でカメラを回しながらどういう風に思いましたか?

 

内田:本当に映画を見ていただきたいんですけど、うまく言えないけれど、”職人さんの精神世界“っていうんですかね、儀式のように見えてくるというか。言葉もあるんですけど、作っているときは黙々と作業しているし、なんだか祈っているように見えてくるんですよ。これは不思議で、僕の個人の見解ですけど、何か祈っているような願っているような、なにかを込めているような。この光景はなかなか言葉にできないので、まさしく映画的だともすごく思いましたね。

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渡辺:僕は職場の光景なので、「今日もやってるな~」という感じなんですけど(笑)。

石原:違う角度から見たら全然違うんですよね。

渡辺:うちはパンですけど、パンじゃないにしても浅草だと歴史の長い店ってけっこうあって、ものを作っている人たちの表舞台じゃない裏方の仕事を眺めているのはけっこうおもしろいというか、興味深く見れるのはわかります。

石原:職人さんの画とか、精神世界というところで、同じ動作をずっとやっていくという作業だと思うんですけど。実際に作業をして作るというのは大変なことですよね。

渡辺:そうですね、厳密に話すと作ること自体はそんなに難しいことではないんです。パンを作るというのは、作ろうと思えば誰でもできる事ですから。でも“美味しいものを同じクオリティーで毎日毎日作ろう”となると、とたんに難しくなるんですね。

映像でもロールパンを巻いてましたけど、巻き一つでも全然違って。

 

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一番年配の名木さんという人がいて、名木さんと同じようには僕はまだ巻けないんですね。もう5年以上はやっているんですけど、どんなに頑張っても名木さんがロールパン巻くの一番早くて、出来上がったものも綺麗なんです。はじめのうちは違いがわからなかったんですが、長くやっていく中で明確に違いが判ってくる。これは名木さんが巻いたやつ、これは○○さんが巻いたやつ・・・みたいな感じでわかるんで、名木さんに比べて僕は『下手じゃない?』みたいなことになっちゃう(笑)

 

ほんとにちょっとした事なんですけど、技量というものは出てしまいますね。名木さんは、40年以上ロールパン巻いて食パン作ってってやっている人なんですけど、やっぱりその感覚や手先の器用さは誰も勝てないくらいのものがあります。

 

時々、名木さんは感覚が鋭敏すぎて、何言ってるかわからない時とかがあるんですよ。
「この生地とこの生地は違うだろ?」とか言われて、最初の方は本当にわからなくて、最近少しずつ違いが分かるようになってきたんですけど。“固い生地で焼くとこういうものができて、柔らかい生地で焼くとこういうものができるんだな”ということも、やりながら段々わかってくるんです。

それを40年間積み重ねてきた人の感覚や技術というのは、「勝てないなぁ」と思いますね。

 

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ペリカンと、お客さんの関係。

伊藤:コミュニケーションに関しては、私はペリカンさんに電話で購入したりするんですけど、それでも“人間と人間”という感じがすごくするんですよ。

例えば、うちの娘が小さいときにコンビニにお菓子を買いに行った時とかに、コンビニの人が娘に対して年上の人に対するのと同じ接客をするのが「なんか気持ち悪いなぁ」と感じていたんです。ペリカンさんの接客は、相手の様子を伺いながら、人と人として、ちゃんと接していらっしゃる感じがしました。

 

渡辺:ありがとうございます。ちなみにこれは人に聞いた話なんですけど、「お店や場所に合った接客が大切」という話を聴いて、その通りだなぁ、と。うちは浅草の下町のパン屋なので、そこで銀行みたいに「いらっしゃいませ!」という感じでやるお店ではないですし。(笑)ちょっとはすっぱかなと思うときもあるんですが。

 

伊藤:でも、ペリカンさんの距離感の取り方が絶妙なんですよね。決して不愛想なわけではなくて、「そういう人なんだなぁ」って自然に思える。

 

渡辺:近所の人が買いに来た時に、「最近見ないけど大丈夫?」とか、本当に二言三言ですけどパートの人もコミュニケーションを取られているのはいいことだなぁ、と思います。やっぱりパン屋って、基本的に地域に根差したものだと思うので、今はこうして取り上げていただいていますけど、『地域の食生活を支える』という感じですね。

 

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伊藤:小さいお子さんを連れている方とかもけっこういるんですよね。きっとその子たちが大きくなったらまた同じようにお客さんになるんじゃないかなって。そういうお店って、今個人商店がなくなってきている中だから、すごくいいなぁって思うんです。

 

渡辺:本当にその通りで、自分が子供の時に両親に食べさせられていた方が、ご自分に子供ができて浅草に来た時に、「子供に食べさせたいなと思って来たんです」という方もいらっしゃるんですよ。これがたまに、三代にわたってくる方とかもいたりして。そういう方がいると本当に長く続けてよかったな、と思います。変なことはできないな、と。(笑)

 

変わらないために、変わる必要がある。

石原:ペリカンさんは、今後の方向というか、これからはどういう風に進化していきたいとか、ありますか?

 

渡辺:最近常々思っているのは、逆説的ですけど“変わらないために変わる必要があるんだな”というのはすごく思っていますね。パン作り一つとっても、夏に冬と同じ仕込みをしていたらダメだし、冬に夏の仕込みをしてもダメですし。毎日毎日1年を通して出ているパンは変わらないものなんですけど、作っているほうは色々試行錯誤して変えているんです。

 

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パン作りひとつ取ってもそうですから、やっぱりお店のあり方を考えていても、結果的に皆さんの前にある『ペリカン』というパン屋が変わらないものであり続けたい、と思っています。

変わらないために、変わる努力をずっとしていかないといけないんだなぁ、と。

 

私も従業員も年を取りますし、これまで40年間働いてくれた名木さんも、今後40年働いてくれるわけではないので、技術の継承とかも必要でしょうし。今までずっと使っていた小麦粉が使えなくなってしまう、とかもあるとは思うので、そういう変化に対応するためにはこちらが変わって、結果的にみなさんの手元に来るパンが変わらないものであり続ければいいなぁ、と思っています。

最近それはすごく考えていることで、うちが目指すべきところなのかなと思っています。

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ペリカン倶楽部 発足。

石原:ペリカンさんのパンに魅せられた人が言葉を交わすサロン、“ペリカン倶楽部”というのが実はあるんですね。部員募集要項というのが色々あるんです。

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渡辺:最後の一文はなんなんですか?(笑)

石原:これが付くことによって、ハズしたつもりだったんですけどね。(笑)部員を募集したからと言ってなにかをするわけではないんですけど、定期的にこういうようなイベントだったり、映画公開まで集まりたいなという気持ちはあります。(笑)
こうして映画の公開までいろいろなことをやっているんですが、GREEN FUNDINGというクラウドファンディングというシステムを使って製作費を募っています。

映画のチケットはもちろんのこと、ペリカンのパンを入れやすいトートバッグも「いい出来だ」と評判なんですね。ぜひサイトも見てみていただけると嬉しいです。

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というわけで、第一回ペリカン倶楽部は、いったんここで終了となります。ありがとうございました。

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11月にオープンしたばかりの中目黒蔦屋にて開催され、関係者は立ち見となるほどの盛況ぶりとなった今回のイベント。トーク中にも出てきた“職人さんの精神世界”を感じさせるような、公開前の予告映像も特別に披露されるなど、盛りだくさんの内容だった。

なお、 “ペリカン倶楽部”の募集は、2017年の2月28日までGREEN FUNDING by T-SITEの中で行われている。

次回のイベントは、12月23日(金・祝)に自由が丘にある築90年の古民家で行われるそうだ。

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中目黒蔦屋書店でのイベントに続き、こちらも参加するとペリカンのパンが食べられるという。まだ食べたことがない方、本作品に興味のある方は、ぜひ参加してみてはいかがでしょう?